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Jupiter(8月15日〜9月1日)

「受かったー!」

 そう言って喜びを分かち合えたのは、それから間も無くのことだった。

「受かったって、受験じゃないんだから」

「なら受験の時はもっと嬉しいんだろうね!」

 結月の思いも寄らない返答に、いつもは口が達者な火ノ川も呆れ笑うしかないみたいだ。

 そしてやはり願望より現実をとった作戦が良かったのか。今となっては何とも言えないが、それでも結果を顧みて良かったと心から思えた。

「でも本当に大変なのはこれからだよ?」

 火ノ川の言った言葉もまた現実ではあったが、それは僕にとってもあまり知りたくはない現実である。だがここ最近の結月は常に前向きだった。

「けど誰かのためって思ったらそれもまた違うよね。

私たちは自分たちのためだけに働くわけじゃないし、その頑張ったお金でまた思い出が増やせるって思ったら、私は楽しみだよ!」

 今から訪れることが初めてでしかない僕たちにとっては、そこには分からない世界しか広がってはいない。でもそれ以上の前向きな夢があればきっと頑張れる。

「それに俺たちは一人じゃないしな!」

 また宙斗が最後に言ったその言葉が、現実しか見れていなかった僕や火ノ川のことを変えてくれる言葉にもなったりしたんだ。






 夏休みも半分以上が過ぎた頃に仕事は始まった。

 慣れない仕事に奮闘するだけでなく、今年も例年と変わらずほぼ手をつけることがなかった夏休みの宿題を一から終わらさなければならない。

 僕たちは夏休みの後半になると毎度の如く後悔の念に駆られている。つまり僕たちにとっての本当の夏休みは前半のみで、もう終わってしまったも同然だ。

 そのため今の僕たちには一番大切にしたいことも後回しにせざる負えない状況であり、雫星のところに顔を出せるのも二日から三日に一回と減ってしまっていた。

 でもこれも仕事に慣れるまでの辛抱で、僕たちは夏休み中に仕事に慣れることを目標に頑張っていた。

 そんな中でたまに雫星に会えた日には、みんなで宿題に取り掛かったりと地獄ながらもひと時の幸せを糧に駆け抜ける日々を過ごしていた。雫星も一生徒として内海先生から夏休みの宿題を手渡されていたようで、みんなで宿題を出来るのがとても嬉しいと話していた。

 これも全て内海先生の狙いだったのかは分からなかったが、そのおかげで何とか忙しない夏休みを無事に終えられそうであったのも認めたくはない事実であった。




 夏休み明けの初日、僕たちは学校に行くと内海先生に褒められた。

 その理由は単純で、四人全員が夏休みの宿題を聢と終わらせてきたからだった。

「いつからそんな真面目ちゃんになったんだ?」

 若干馬鹿にしているような内海先生の褒め方が鼻につく。けれど今思い返せばそれにも納得がいく。

 火ノ川だけは別として、結局のところ夏休みの宿題を全て終わらせ新学期を迎えたことなんて僕たちにはなかったのだが、今回は雫星と一緒にいるうちにスラスラと全てを終わらしていた。それどころか仕事もした上でちゃんと終わらせなければならないと焦ってもいた。

 そう考えると、雫星と出会ってから真面目を進んで行っているのかもしれない僕たちが少し怖くもなってしまう。

「良い相互作用だな」

 ただ一人、内海先生だけが喜びに浸っていることだけは確かだった。

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