Mars(8月6日)
旅行から帰宅した次の日、僕たちは数日前の光景がまた戻ってきたかのように雫星の病室へと集まっていた。
その光景を目にすれば、昨日まで旅行に行っていたことがまるでおとぎ話のようにも感じてしまうが、未だに僕の鞄には渡せていないままのリングが四つ入っている。結局帰り際も切り出すチャンスがなく、今もその機会を伺っている最中だった。
すると会話に区切りがついたのか、急に静かになる瞬間が訪れた。僕はそれを逃すまいと切り出してみることにする。
「実は四人を待ってる間にお土産買ってたんだけど……」
どうしてなのか、それを言うだけで四人にちゃんと喜んでもらえるのか僕は少し緊張しているようだった。
「えっなになにー?」「どうせ大したものじゃないんじゃないのー?」
けど直後に軽い気持ちで聞いてくる結月と、期待さえしていない火ノ川がその緊張感を馬鹿馬鹿しく思わせてくれる。なのでその気持ちのまま堂々と鞄から取り出し渡すと、それを受け取った四人はそれ相応に良いものだと捉えてくれたみたいだ。
「すごく気に入ったよ。ありがとう」
その中でも雫星は一番にお礼を言ってくれた。
「わぁこれすごくいいよ。自分でサイズ調節できるし!」「何なら親指にも入るぞ!」
それに続くように結月と宙斗も嬉しそうに自分の指へと嵌めていた。
「でも何でリングにしたわけ?」
思ったよりは良い品物だったと言いたいのか、リングを手に取り眺めたまま不服そうに聞いてくる火ノ川。
「別に大した意味はないけど。お揃いにしやすいし。」
「それで?」
完璧な理由を求めているのか、間髪入れずに聞いてくるため、僕はそれを左の薬指に嵌めて見せてみる。
「例えばここ。韓国ではここの指に嵌めるのが親友の証だったりするから。
いっつもこのメンバーでいるし、ちょうどいいかなって」
僕がそう言うと、火ノ川以外の三人は感激しているようだった。
「何それー!陽すごいよ!」「めっちゃいいじゃんかよー!」
そして僕の真似をするように同じ場所に嵌めている。
「まぁ地崎にしてはなかなかじゃない?」
そう言って最後まで偉そうにしていた火ノ川も、最終的には皆んなと同様、お揃いの指に嵌めていた。
あまり普段からこういうことに対してセンスがなかった僕だが、思いの外皆の反応が良かったため、一安心と共に鼻が高かった。




