Mars(8月4日)
その日の夜になり、僕と宙斗はそれぞれ鞄の中身を広げて寝るための準備に入ろうとしていた。
「はーい始めるよー!」
でもすぐに僕たちの部屋に不法侵入してきた女子三人によってそれは阻止される。大量のお菓子と共に部屋へと乗り込んで来た後、手際良くベッドの上に次々と広げられていくお菓子たちを見て僕は驚かされる。
「この量どうしたんだよ!」
それは僕より先にそう言った宙斗も同じだったようだ。
けど当たり前のように火ノ川は答える。
「パーク内で買ったポップコーンの残りと、プラスでさっきコンビニ行って買ってきた」
「またコンビニかよ」
僕は呆れて口に出す。
「何言ってんの、コンビニって神なんだよ!」
それに対し結月は目を見開いて言うが、僕はそんな話を人生で一度たりとも耳にしたことはない。でもその言い方で、どうせ止めても無駄なのだろうと諦めはついた。
そして同部屋の宙斗のお人好しは相変わらずだ。そうなると決まれば普通に女子に混じってお菓子を頬張っている。まるでその光景は僕だけが女子会に一人浮いている男の気分でしかなかった。
溜め息まじりに僕はベッドに置いてある枕にもたれ掛かり、部屋に入ってすぐ何となく点けていたテレビ画面に視線を向ける。そこには僕たちらしくはないニュース番組が流れていたが、テレビのリモコンが離れたところにあったため切り替えるのも諦める。続く映像の中で、僕たちには身近に感じるニュースが流れてくる。
「えっここってこの前行ったショッピングモールじゃない?」
そう言った結月たちも、お菓子を片手に視線はテレビへと向いていたようだった。
「物騒だな」
宙斗でさえそう思ったニュースの内容は、今日の正午頃に女子高生がナイフで腹部を刺されたというものだった。
「十七歳……」
事件の被害者となり、その後死亡した女子高生の年齢を静かに口ずさんでいた雫星は僕たち以上に衝撃を受けているようだった。
「雫星?大丈夫?」
「あっうん、大丈…夫……」
結月の声掛けにもこの反応だ。けれど僕たちが受けた衝撃とはまた違う衝撃が雫星にはあったのではないかと思う。家から身近なショッピングモールであり、しかも同い年となればそれ相応の恐怖だって僕たちにもある。だが犯行動機は怨恨だったため、たとえ僕たちがその場にいたとしても被害に遭う確率は少なかったのかもしれないとも捉えていた。
けれどもうすぐ死ぬと宣告されている人から映るこの光景はどんなものだったのだろう。僕には全くもって分からなかったが、それが雫星にとって恐怖の感情を引き起こしているようには見えた。




