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Mars(8月4日)

 僕たちは移動をしながら空いているテーブル席があるところを探して回る。時間もちょうどピークを過ぎた頃だったからか、程なくして五人で座れる席は見つかった。

「なら買ってくるけど、何か食べたいものある?」

「俺はチキンとピザ系かな!」

 どうやら話の流れから買い出しは火ノ川が行ってくれるらしく、宙斗は躊躇なく注文を託している。

「私はチュロスかな!雫星もでしょ?」

 結月の問いかけに雫星は笑顔で頷く。

 それぞれの注文をスマホにメモしている火ノ川を見て、心配そうに結月は聞く。

「でも一人じゃ大変でしょ?私も行こうか?」

「あーうん、それじゃあ……」

 火ノ川が結月の言葉に甘えそうになった時、僕は言った。

「僕が行くよ」

「え?何で?」

 火ノ川の怪訝そうな顔と、無言で驚いている結月の顔が同時に僕の目に映り込むが動揺はしない。

「いいから。」

 そう言って立ち上がり先に進み始めた僕に、火ノ川も黙って後をついてきているのは分かった。


「ちょっと地崎?何なの?」

 ずっと火ノ川の前を無言で歩き続ける僕に、火ノ川は小走りになりながら聞いて来る。でもまだ僕はそれに答える気はない。

 この話は火ノ川と二人になってから話したいと考えていた僕は、三人から離れた先にあるチュロスのお店に着くまで、火ノ川に何を聞かれようと無言を貫き通していた。


 チュロスのお店に着き、横並びに並んだところで僕はやっと口を開くことにする。

「この旅行、チケットが五枚当たったなんて嘘だろ?」

「は?何急に。当たってなきゃ今ここにいる訳ないじゃん」

「高が商店街にあるような規模の抽選で、ペアチケットならまだしも、五人分が当たるなんて見たことも聞いたこともない。

それが五枚なんて、偶然にしても出来すぎてるだろ」

「私が嘘をついているように見えるっていうの?」

「いいや。だけど真相を知っておきたいと思っているだけだ。

五人のうちの一人は僕のチケット代であり、それの経緯くらいは知っていてもいいんじゃないか?」

「はぁ。ほんと面倒くさいよね地崎って。

本当に当たったのは当たった。地崎の言う通りペアチケットがね。後の三枚は私が買い足した。」

「何でそんなことを?」

「これでも二等が当たったんだよ?

正直な話、元々一等の景品には興味なかったから当たるならこれが良いと思ってたけど、当たる訳ないとも思ってた。

でももし当たることがあるならその時は五人で行きたいって、自分の番が来るまでに並びながら想像してた。

それで本当に当たった時に、これは五人で行けっていう運命なのかなって感じただけだし、それ自体に理由なんてないでしょ。」

「でも五人分なんて相当な額だろ?

その全部の費用を一人で負担って、しんどくないのか?」

「別に。絶対に後悔はしないから。」

 火ノ川は終始不機嫌ながらに僕の問いに答えていた。

 その全てが火ノ川らしいとも思ったし、それに対して僕が今更とやかく言う必要もない。ただせめてもの恩返しとして、これを後悔させない思い出にはしなければならない。


「買ってきたよー」

 三人の元へ戻ると、火ノ川は出来立てのチュロスを結月と雫星にそれぞれ渡した。

「えっ俺のは?」

 宙斗にそう言われ、僕たちはそこで初めて気がつく。

「あっ忘れてた」

 そんな純粋な火ノ川からの返事を聞き、宙斗は悲しそうに肩を落としていた。

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