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Mars(8月4日)

 目的地であるテーマパークに近づくと、そこは離れた場所からでもそこが目的地だと一目で分かるくらいに他とは違った華やかさがあった。その規模は大きく、高い乗り物は敷地内から天高く飛び出し近づく者たちを圧倒させてくれる。そして近づけば近づくほど、激しく耳を劈く賑やかな音が聞こえてくる。

「着いたー!」

 そんな音が飛び交う中でも結月の声ははっきりと聞こえた。

 僕たちはそれぞれ火ノ川から渡されていたチケットを手に入り口へと向かう。

「ねぇねぇあれ乗ろ!」

 一番に入り口を潜り抜けた結月は斜め上を指差している。

「あれ?大丈夫かな……だって一回転してるし……」

「大丈夫大丈夫!はい行くよー!」

 心配そうな雫星を余所に、問答無用で結月は連れて行こうとする。その間にも頭上からは滑車の音と叫び声が同時に耳へと飛び込んでくる。僕は想像しただけで心臓が締め付けられるような思いをして、一人その場で立ち止まってしまう。

「なら陽はどこかで待ってるか?」

 振り返って当たり前のように聞いてくれる宙斗は、こんな時の僕にとっては救いでしかない。

「え?どうして?」

 けれどその状況に雫星だけは驚いた顔を向けている。

「あれ?雫星知らなかったの?

陽はジェットコースター系は苦手なんだよ」

 そんな雫星に結月は淡々と説明をする。

「ちなみにお化け屋敷もね」

 そして説明する結月の背後からコソッと小馬鹿にしたように言った火ノ川にはイラっとした。

「そうなの?」

 雫星には今日まで伝える機会もなく知らなかったみたいだが、三人は元々知っている上で僕が乗れないことをもはや馬鹿にもしている。

「男で乗れないのはちょっとなぁ!」

 宙斗にとっては唯一僕に対し偉そうになれる瞬間でもあり、その態度にさっき救いだと思ったことを一瞬のうちにして取り消したいと思った。

 だが僕も宙斗の苦手分野を知っている。だからこの場では言い返さずとも、どこかで同じようにやり返す時を必死に頭の中で練っていた。


「じゃあねー」「また後でー」

 そう言って四人と別れた僕は早速一人になってしまった。

 だけども僕は一人時間の潰し方を知っている。持参してきた本を一冊鞄から取り出し、近くの空いていたベンチに腰を掛ける。賑やかで華やかな雰囲気には似合わない、読書という時間をただひたすら満喫する。

 そうして一冊の本もそろそろクライマックスに近づいて来る頃、ここからという時にそれを邪魔するかのような高めの声が耳に入る。

「戻ったよー!」

 結月のその声で僕は本の世界から我へと帰り、本から視線を上げればそこにはいつもの楽しそうな三人と、それを共有している雫星の姿があった。

 どうやらその楽しそうな姿から、僕とは違って雫星はこういう系が得意だったようだ。

 正直雫星も余命付きの病の関係から乗れないのではと思っていたが、僕は余命というものの認識を履き違えていたようだ。

「そろそろお腹空かなーい?」「ちょうどお昼にしたい頃だよな!」

 そんな結月と宙斗の会話を聞き、僕はまだ乗り物一つ乗っていないと思ったが、時計を見てみればもうお昼の時間は疾うに過ぎていた。

「やっぱり夏休みだね。さすがにもうちょっと空いてるかと思ったんだけど」

 火ノ川がそう言ったことで、本に夢中になっていた僕は時間感覚など気にもしていなかったが、乗り物一つ乗るために相当な時間費やし並んでいたのだろうと知った。

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