Mars(8月1日)
買い出しの日、待ち合わせ場所に向かうと雫星がいた。
いつもの四人なら僕が一番に着いているため、僕より先に来ている人がいたことに違和感しかなかった。
「雫星?おはよう。早いね」
何故なのかは分からないが、遅刻常習犯の結月が午前中にしたいと待ち合わせ時刻を十時に設定していた。僕からすればそれは別に良いのだが、絶対に間に合わないはずの人が言い出したことに素直に納得はできなかった。
時計を見れば九時四十八分。それでも僕は十分前にはここに着いたことを示している。
「雫星は何時に着いたの?」
「えーっと……」
何故か言うことを少し躊躇っているように見えたが、その後の言葉を聞いて納得した。
「今から三十分くらい前かな。」
「えっ?」
僕はその時間に思わず驚いてしまった。一体何時に起きて家を出たのか。
でも雫星はまだモジモジとしていたため、僕は念押しで質問をする。
「本当に三十分?」
僕が聞くと雫星はびっくりとした顔で動揺を見せる。僕が片眉を上げ、雫星からの返答を待っていると同じく躊躇いつつも観念して答える。
「いっ一時間前くらいだったかな……?」
「一時間!?」
僕は思わぬ返答にさらに驚き聞き返してしまう。
「うん、緊張しちゃって」
「緊張?」
「だってこんなのも初めてだったから……」
つまりは昨日の夜楽しみでなかなか寝付けなかったという現象が雫星の身にも起きた訳で、そこまで期待されているかと思うと僕一人だけでは荷が重かっただろう。
「二人で何話してんのよ」
時計を見れば十時ジャスト。やはり次に来たのは予想通りの火ノ川だった。
「いや、ぼーっとしてないで答えなさいよ」
「あっいや、別に残りの三人を待ってただけだけど」
「はぁ?」
何も偉そうなことは言っていないはずなのに、火ノ川に睨まれてしまう。
「流和待ってたよ!」
「雫星ー!!」
僕から雫星に視線を移した途端、鬼の形相だった火ノ川は真っ先に雫星の元へと笑顔で駆け寄って行った。こうやってたまに火ノ川と馬が合わないことは多々あるが、その場合は雫星に任せれば良いのかと勉強になった。
「可愛いね、この服」
「本当に?嬉しい!」
火ノ川はすぐに雫星の服装を褒め、気づいてくれたことに雫星もとても嬉しそうにしていた。その後も火ノ川は続けていつもとは違った雰囲気の雫星を褒めていた。
確かに言われてみれば今日の雫星はいつもと違ってメイクをしているのか顔も華やかになっている。髪型もストレートのいつもとは違ってカールされている。僕はそんな一つさえも気づけず褒めてあげられなかったことを、多少気にしてしまった。
そこから数分が過ぎ、待ち合わせ時刻が過ぎた頃になって二人は来た。
若干宙斗の方が早くは着いていたが、遅刻は遅刻なので結月と同等の扱いをした。ただこれもまた雫星が関係しているのか、遅刻常習犯の二人もいつもよりはずっと早く来ていたため、これからは毎回雫星を待ち合わせに連れて来たいものだと僕は思った。
そして想像していた通りではあったが、会って数分後には女子と男子で別れての買い物となっていた。それはそれで良いと思っていた僕と、どうしてなのかと意地けているようにも見える宙斗。きっと火ノ川と一緒に買い物をすることを楽しみにでもしていたのだろう。
面倒くさいがそんな宙斗を連れ、栞に書かれていた必需品を用意するべく店を転々とした。




