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Mars(7月27日)

「ねぇ旅行しない?」

 いつものように病室という場に似も付かず、会話が弾む中でそう言い出したのは火ノ川だった。

「実はこれが当たったんだ」

 旅行というワードに驚きを隠せない僕たちに火ノ川が見せたのは、CMでもよく見かける人気のテーマパーク行きチケット五枚分であった。

 夏休みに入ってすぐのことでもあり、それを僕たちは喜びの言葉と捉えていた。

 それでも人気のチケットを、それも運良く五枚分……

 他の誰もが気にならなかったとしても、僕だけはその事実が気になってしまう。

 火ノ川が言うには、買い物帰りにたまたま寄ったくじ引きのイベントで当たったとのことだが、その話に単純である結月や宙斗は子供のように燥いでいた。

「まぁ雫星が良ければの話なんだけど……」

 そして心配そうに火ノ川は雫星の方へと目を向ける。

 けれどそんな心配とは裏腹に、当人の雫星は断る素振りなんか一切見せずに笑顔で言う。

「旅行なんて初めて!それにこんな楽しそうな所になんて行ったことないよ!」

 雫星の反応に火ノ川はホッと肩を撫で下ろす。

 その様子には理由があると僕は見たが、安心する火ノ川とどんどん話が進んでいく計画に、僕が今この瞬間口出しする必要もないと踏んだ。


 勉強に関しては全く捗らないのに、こういう話の時だけは皆が積極的に参加し面白いように話は進んでいく。それを不思議に思いつつ、僕は当たり前のようにそれを傍観していた。

 決まった内容に従う。それが今の僕の生き方だった。

 それにある意味僕までが意見を出してしまえば、意見の対立が増えるだけで時間の無駄だ。それなら一人の意見が減る分には喜ばれる上、今日も僕が口出ししないことに誰も文句はないようだ。



 旅行の計画は二日間の話にも関わらず、話し合いには一週間ほどをかけ旅行の内容はようやく栞と化していた。

 おかげで夏休みの初週を大きく無駄にした気がする。もっと単純に決めても良かったのではとも思えるが、やはりそこも雫星の影響が大きいのだろう。全ての物事に僕たちの中では最後という言葉が脳裏を過ってしまう。なので後悔のないように仕上がったのなら、それに越したこともないのは確かだった。

 結月と火ノ川お手製の栞が全員に配られ、残す所あと三日。

 一泊二日の旅行ということもあり、僕たちは旅行の買い出しにショッピングモールへ出掛けることにした。

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