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Mars(7月19日)

 ゲームセンターに行った次の日から、そのぬいぐるみは雫星の病室のベッド脇に置かれるようになった。

 今日は雫星がある物を見せたいという理由で病室へと赴いていたが、病室に入ってすぐ、まだ席にも着いていない慌ただしい僕たちの目にそれは飛び込んでくる。

「ジャーン!」

 そう言って雫星が嬉しそうに見せびらかした物は、新しく買ってもらったというスマートフォンだった。

 雫星の嬉しそうな様子も相俟って、僕たちの反応は驚きと喜びに満ち溢れていた。

「アドレス交換しよ!」

 スマホをゲットしたと知り、すぐさま僕以外の三人は自分のスマホを片手に雫星との連絡先交換を試みている。

「でもまだ使い方があんまり分かってなくって……」

 そんな三人に申し訳なさそうに雫星は答えたが、それもそのはずだった。

 今まで雫星との連絡手段は病院の内線を通してでしかしたことがなかった。スマホどころかガラケーさえ使いこなせないだろう雫星には、難易度が追いついていないのも当然のことだ。

「なら私たちが教えてあげなきゃね」

「まずアドレスの交換の仕方を教えるね!」

 そう言って雫星の隣を陣取った火ノ川と結月は、初心者の雫星にも分かるよう少しずつ丁寧に教え始めていた。

 その甲斐もあってか、何とか四人分の連絡先を交換することは出来たが、それには普通の二倍以上の時間を要していたと思う。

「それじゃあ次に……」

 そう言いながら結月は雫星の携帯を操作する。

「SNSとかは入ってるの?」

「SNS?何それ?」

 火ノ川からの質問に、当たり前のように首を傾げた雫星。

「こういうやつだよ」

 ピンと来ていない雫星に、火ノ川は実際に自分の携帯の画面を見せる。

「ここに写真を入れて、文章をつけるの。

ハッシュタグとかつけたりして、みんながおんなじ投稿を共有できたり探しやすくしたり……」

 画面を操作しながらの説明に、雫星は目で追っていくのがやっとに見えた。

「まぁ要は写真付きの一言ブログみたいなもの」

「そっか……」

 そう言って少し考えた雫星はあっさりと答える。

「でも私には難しそうだし、これはいいかな」

 火ノ川からの流れるような説明が逆効果だったのか、雫星は始める前から既に諦めてしまったようだった。

「えーそうなの?なら写真の撮り方だけでも教えるね!」

 一瞬は残念そうにした結月も、その切り替えは早かった。

「写真の撮り方?」

「うん、盛れる撮り方だよ!」

 その後雫星は手の角度からシャッターを押すタイミングまで、二人にみっちりと教えられていた。

 僕だったら根を上げてしまいそうだが、雫星が終始楽しそうにしていたのは何よりだった。

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