Mars(6月20日)
一日空いた月曜日の放課後、僕は結月たち三人にいつものように教室に残るよう伝えた。
三人は僕から話される内容をある程度は分かっていたのだろう。普段ならふざけてばかりの宙斗だって、至って真面目な顔をして黙って席に着いていた。
教室を埋め尽くしていた生徒たちは瞬く間に減っていき、続く沈黙の中、四人だけになるまでの時をただ只管静かに待っていた。
そうしてがら空きになった教室で、僕たちはそれぞれ誰の席かも知らないバラバラの席に腰を掛ける。
「それで話って?」
四人になってから数秒が経ち、この状況に嫌気が差したのか最初に口を開いたのは火ノ川だった。
「雫星のことについて話しておかなければならないと思ったんだ。」
僕が名前を出した途端、結月の顔色だけは浮かない顔になったのが分かった。
でも構わず僕は話を続ける。
「あの日あったことについては、三人が話して来るまで僕から聞く気はないよ。
けど雫星のことは知ってもらおうと思っている。」
そう言って僕は、雫星に出会ってから今日までのことを三人に包み隠さず話した。
話を進めていくにつれ、最初は良かった三人の威勢が徐々に無くなっていくのを感じた。
大まかに話を伝え終えた時、それまで三人と視線を合わせずにいた僕は、改めて三人の方に目を向けてみる。
そこで一番に目に入ったのは、言動と共に分かりやすく動揺している火ノ川や宙斗の姿だった。
恐らくだが、二人は僕と同じく傍観者に近かっただけで、結月を止めることができなかった立場にいたのだろう。そして結月のことも昔から知ってはいるが、火ノ川や宙斗と同じように心は誰よりも優しい人だ。
そんな結月は僕の話で火ノ川や宙斗以上にショックを受けていたのか、絶句したまま声を発することはなかった。
僕の話に三人はとても心を痛めているように見えた。その中でも一番響いたのは、やはり余命の件だろう。
正直僕あるいは僕たちに何ができるのかは分からないし、何をしてあげたらいいのかも分からない。だけど貰ったチャンスを生かすことだけはしなければならないと思った。
そのきっかけを作れるのはこの場で僕しかいない。
「もう一度、雫星に会ってみないか?」
僕の問い掛けにすぐに頷いた火ノ川と宙斗だったが、結月だけからは一向に返事が無かった。
それには恐らくだが、もう少し時間を要すのだろうと悟った。
それくらいに雫星のことを知り、自分をとても責めていることが幼馴染の僕には犇々と伝わって来ていた。




