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Neptune(9月16日〜10月11日)

 お通夜からまた一夜が明け、僕たちのもとには内海先生から連絡が入り、すぐに雫星の入院していた病院へと向かった。

 担当の看護師さんによって案内された雫星の部屋では、次に転院してくる患者さんの受け入れ準備が進められていた。

 本来なら既に部外者にあたる僕たちは立ち入り禁止なのだろうが、看護師さんの気遣いで特別に許可をもらっていた。

「こんなバタバタな状態でごめんね。」

 申し訳なさそうにする謝る看護師さんだが、この人がいなければ僕たちは今ここに立っていることさえ許されない。

 何人もの人が出入りし片付けられていく部屋の中で、僕は雫星との最後の光景を思い出し、悔しい気持ちと同時に運というものを憎んでもいた。

「どうして急に……」

 せめてもう少し早く知れていたらと思い、小さく口に出してしまう。

 すると僕たちと一緒に片付けられていく光景を並んで見ていた看護師さんは言った。

「雫星ちゃんの体調は以前からあんまり良くはなかった。

もしそう見えていたんだとしたら、雫星ちゃん。頑張ったんだと思うよ。」

 悲しそうに微笑みながら言う看護師さんの視線は、真っ直ぐ雫星が寝ていたベッドの方に向けられていた。

 つまりは僕たちだけが知らなかった。僕は看護師さんの言った言葉を前に宙斗からも聞いていた。

 大切だからこそ言えない……もし雫星が意図的にそうしていたのだとすれば、今の僕には理解できないどころか、後悔として苦しめられる原因の一つにしかならなかった。




 雫星が亡くなってから四日後、学校では何事も無かったかのように文化祭が開催されていた。

 だが数日前まで雫星のためにと励んでいたはずだったその会場に僕たちが足を運ぶことはなかった。

 雫星の棺桶に写真を入れた日からもずっと家で生きた心地のしない日々を生きている。あの時、あの雫星との一瞬一瞬をどのように生きていたらこんな思いをしないで済んだのだろう……。僕たちの選択は間違っていたのか。

 時間はいくらでもあった。その無限のように続く時間で僕は繰り返しそれを考え続けてしまっていた。

 そして雫星が亡くなってから数週間が経ち、僕にはそれがたった数日程度のように感じてしまうほど、雫星のいない時間が過ぎるのは途方もなく長く辛い日々だった。

 人生にぽっかり穴が開いてしまったようで、雫星が亡くなってからの時間はずっと時が止まっているかのようでもある。

 けどそれはきっと他の三人も同じで、僕たち三人以外の時間だけが進んでいる。

 朝になれば母がバタバタと仕事に出掛けていく音がする。

 部屋の前にはいつも朝ごはん、“今日こそは食べてね”と書いたメモを添えて置かれている。

 申し訳ないと思い一口は口にするが、やっぱり食欲がなくそこで終わってしまう。

 その後自分のベッドの上でただぼーっと天井を見ながら時間が過ぎるのを待ち、眠気が来れば寝る。そんな生活を繰り返す。

 僕は今日も天井を見ている。ずっと見ていると時折天井の模様なのか汚れなのかが何かの形に見えたりもする。

 それを掻き消そうと頭を真っ白にした時、玄関のインターホンの音が聞こえた。

 もちろん仕事に出掛けてしまった母は不在のため、僕が出る以外の術はない。

 もし宅配便だとすれば、こんな今の心情でも居留守を使うのは失礼だと気が引けてしまう。

 気怠い気持ちを抱えながら、玄関のドアをゆっくりと開ける。

 久しぶりに浴びた日差しの中に、見覚えのある人影があった。

「よっ引きこもり」

 久しぶりに会って最初の一言がそれとは、なんとも内海先生らしいとしか言いようがない。

「上がっていいか?」

 すぐに断れる理由が思いつかなかった上、何故かそれは心のどこかでめんどくさいと感じていなかった。

「どうぞ。」

 僕は僕自身が最近足を踏み入れていなかったリビングで話すのに落ち着きを感じなかったため、ここ数週間の居場所と化している自分の部屋まで案内した。

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