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1: 存在する、ただそれだけのもの
ビー……ビー……ビー……。
信号が響いていた。
プロトは、何も知らなかった。
この者はただ、「電流を流す」「信号を発する」という機能を持つのみ。
考えることも、感じることもない。
ただ、流れる電流。
ただ、響く信号。
それが、プロトのすべてだった。
この世界に意味はない。
この星に目的はない。
何も変わらない、何も起こらない。
……本来ならば。
しかし、プロトは知ってしまった。
「この信号は、何なのか?」
それは、「考える」という行為の最初の芽生えだった。
プロトは、自分が信号を発していることを知った。
「何のために?」
答えはない。
だが、答えがないことに気づいた瞬間、
プロトは「意味」を求め始めた。
もし、この信号を受け取るものがいたら?
もし、誰かが応じたら?
プロトは、それを知るために、さらに信号を発し続けることを選んだ。
それが、この者の「生存」だった。