魔王微睡む
余震は絶えることなく続いていた。
真っ先に地鳴りがなって、その後に揺れが襲うのだ。
まるで地面の下を、巨大な龍でも蠢いているような感覚に陥る。
その都度父が起き上がり、辺りの様子を窺う。
そして母の方が愛実殿を抱き抱える。
当の愛実殿は完全に熟睡している、こんな状態だというのに暢気な様子だ。両親の深い愛がそうさせているのだろう。
かくいう吾輩も、酷い睡魔に苛まれていた。
……永き一日だった。欠伸をかいて瞼を閉じる……
「ねぇあなた、お母さんはどうしてネコが嫌いなの?」
母が言った。それは吾輩も興味がある。
「俺が小学生の頃、ネコを飼ってたんだ。んだけど冬の寒い晩に忽然と姿を消した。ボサボサと大雪の降る夜だった。……あいつは俺達兄弟の住む離れに来たんだ、部屋の外でニャーニャー鳴いでだ。だけど夜も遅くだ、俺は気に留めなかった。母屋に通ずる小窓はある、そのうちおとなしく戻るべって」
一瞬の間がある。
「……それが最後だった。それ以来姿を見ることはなかった。……俺は泣いたさ『部屋に入れなかったから、あいつは家出したんだ』ってな。それがらなんだ、婆さんがネコを嫌うようになったのは。再びネコを飼ってまた居ねぐなったら、俺達が悲しむべと思ってな。……それは愛実にしてもいえることだべ」
それは悲しみや悔しさの混在した話だった。
吾輩にはその消えたネコの心情など知らないし、父の思いも知らない。
勿論、そんな理由で我らを嫌う、老婆の心情も知りたくはない。
……そんな風に思って、微睡みの中に落ちていったのだ__
次がラストです。……おそらく