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吾輩は魔王である  作者: 成瀬ケン
第二章
12/14

魔王とバベルの塔


「ひでー地震だったな。小名浜とか相馬は津波で酷い有り様だってよ」


「姉さんの住む須賀川も酷いらしいよ。近所の家も全壊だって」



 その夜、吾輩は初めて人間の邸宅に招待された。


 ポカポカと暖かい空間だ。


 夜だというのに昼間みたいな明るさ。


 不思議な箱の中では、平べったい人間がお喋りをしている。



 勿論魔界にも、夜を明るく照らす魔法や、離れたビジョンを飛ばす魔法はある。


 人間がこれ程、魔法に精通してるとは思わなかっただけだ。



 魔法の箱、通称テレビによれば、これは地震という自然現象らしい。


 地面が動いて起こる事象だそうだ。



「おとーちゃん、おっかねーよ」


 時折余震なるものが襲ってきて、室内が騒然となる。

 その都度、愛実殿が身を丸くして震える。


 先程のそれとは規模が違うが、こうも幾度となく連発すると、生きた心地もしないであろう。



「あんた、どうすんだいこのネコっ子」


「愛実が落ち着く、当分おいとくべ」



 この家族は四人暮らしのようだ。この男女は愛実殿の父と母。


 あの老婆は驚いた拍子に腰を痛めて、医師の手当てを受けているらしい。当分は他の場所で治療に専念するそうだ。


 でなければ吾輩が、ここに招待される筈もない。



 彼らはずっとテレビに釘付けだ。


 なんでも原発とやらが、大変な状況になっているそうだ。


 よくよく話を訊くと、人間達はその原発でテレビや灯りを操っているそうだ。


 つまりは魔法の原動力ということだな。



 そして今回の地震で、その原動力が制御不能に陥ったそうだ。


 このままでは暴走して、魔力が解き放たれてしまう。

 それがどんな災いとなるか、それを恐れているらしい。



 それで合点がいった。原発とは聖霊を捕らえて、閉じ込めておく装置のことだろう。その魔力に頼って、様々な恩恵を受けている。



 つまり人間は魔法は使えないのだ。

 だから今回のように、逃げ出した聖霊をおそれている。



 確か今回のような逸話いつわ、太古の昔に訊いたことがある。


 神に台頭しようと、巨大な塔を建築して、最後には神の怒りをかって、滅亡寸前まで追い込まれた。



 まさに愚かだ、その過ちを再び侵すとは。


 そもそも下等な種族に、聖霊の力を使いこなせる訳もないのだ。


 最後にはその魔力に焼かれて、自滅するだけなのに。



「とにかく今夜は寝るべ」


「だったら、マオちゃんも一緒に」


「……マオってのは、このネコの名前か? 井上真央のマオ?」


「うん、マオちゃん」



 その会話は吾輩にはさっぱり理解不能だ。

 それでも吾輩を魔王と知って、敬意を払って吾輩にマオとつけたのだろう。

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