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吾輩は魔王である  作者: 成瀬ケン
プロローグ
1/14

魔王の終焉


 吾輩はルシフェル。


 魔界を支配する三代目魔王である。

 端正で崇高すうこうなる面持ちに、荘厳そうごんなる肉体。着込むのは漆黒のヨロイとマント。

 この吾輩の威風堂々たる姿で、多くの男達をひれ伏せて、多くの女達を虜にしてきた。



 吾輩の使命は、神と対立して、奴らが創りし世界を討ち滅ぼすことだ。

 吾輩はその職務を全うして、神の世界と戦い続けてきた。



 吾輩が剣をふるえば、巨大な山が真っ二つに切り裂かれた。吾輩が掌をかざせば、凍てつく凍土も、激しい業火で焼き尽くされた。


 何千年何万年という長き戦争だった。

 幾つもの町が焦土と化して、死者のむくろで巨大な山が姿を現した程だ。



 時には神が創りし人間とも戦ってきた。

 人間という輩はとてももろい存在だ。そのくせ自己愛が強く、己ばかりを尊重する。物欲にまみれていて、簡単に仲間も裏切る。見た目や居場所に固執して、異質なものは簡単に排除する。

 時には深い欲望や、激しい憎悪の為に、我々魔族にまで頼ることもあった。


 そもそも人間など、不完全な生き物なのだ。愚かな神が創りし種族なのだから、それも当然である。


 だから簡単に攻略できた。権力と金と異性、それにみあう僅かながらの、"大義"さえ与えれば、人間などいちころだから。


 吾輩は鼻高々だった。

 このまま勢いに任せて勢力を拡大すれば、我々が望む暗黒世界は、すぐ実現するであろう。




 ……だがその楽観ぶりが、吾輩の運命の歯車を狂わせてしまったのだ。



 戦勝祈願の宴の夜だった。

 吾輩、酒に酔って、城の最上階から落下してしまったのだ。


 とはいえ吾輩は魔王、それぐらいのことは日常茶飯事。普段であれば身体の頑丈さを示す武勇伝として、笑い話で済んだことであろう。

 だが落下した場所には、一匹の化け物が、鎖で繋がれていた。神々との最終決戦を見越して、聖霊界から連れてきていた翼竜ドラコンだ。


 よりによってあのクソ化け物、嬉しそうに吾輩を噛み殺したのだ。



 馬鹿だった。『聖霊界で一番凶暴で、イカれた化け物を見つけてこい』そう伝えたのは吾輩だったから。

 正直イカれ過ぎだ、飼い主の顔も覚えていないのだから。



 普通の輩ならば、それで物語は終焉しゅうえんとなろう。いっさいがっさいの無、となって、忘却ぼうきゃくの彼方へと、葬り去られるであろう。


 しかし吾輩は魔王である。このまま終わるなど許される訳がない。世界の摂理が、それを良しとしないのだ。


 幸いなことに、この世界には転生という摂理が存在する。

 だから吾輩は決めたのだ。再び生まれ変わり、この世界を暗黒に染めてやろうと。






 こうして巨大な満月が夜空を支配する真夜中、偉大なる父君と母君によって、悪魔の種子は結合したのだ。


 母君の腹に宿ること六十日、遂に吾輩は、この世界に姿を現すこことなったのだ。



 神よ全てを呪え、この暗黒世界の始まりの日をなげくのだ。



 吾輩は魔王である。名前はまだない__

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