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クロエの青春

作者: 楠 ユウ

「もっと目を大きく描いてくださらない?」

「私の髪色は透けるような薄茶色でしてよ」

「私の腰はもっとこう細いはずですわよ?」

「まぁ、そんな事も言ってよろしいの?」

「あら、本当のことですものよろしいんじゃなくて?」

「・・・・・」

「もう!ふふ、ちょっと・・・ふふふ」

「ふふふ、やだ止まりませんわ」

「いいじゃない!本当のことでしょう?皆さまもお願いなさったら?」


楽しげな笑い声が響くのは、私ことクロエ・オーギッドの経営するサロン。

絵を描いてくれるお店だ。

前世でいうところの「プリクラ」の代わりに店を出したところ

貴族を中心に大流行り。

貴族の口コミってすごい。


写真もないこの世界。思い出を残すには手紙や日記を書くしかない。

絵を描いてもらうのだって、「家族の肖像画」か「釣り書き用の肖像画」が基本。

そんなのつまんない。


加工?やるやる!盛って盛りまくる!

青春よ!


女学院の同級生である美術部員にバイトをしないかと持ちかけたところ大盛況で感謝された。

歩合制で給金を支払い、もし顧客がつけばお抱え絵師になってもいいという条件で女性絵師はいないかと聞くと、これまた絵師ネットワークで希望者が来た。


この世界、油絵が主流。発色のいい絵の具なんてない。

でもなぜか色鉛筆だけはあるのよ。異世界補正。

時間のかかる油絵ではなく、ささっと色鉛筆で描いてサクッとお帰りいただく。


当初は繊細で優しい絵が「さすが女性絵師だ」と人気だったけれど

今や「絵師が女性だから」とみなでお揃いの衣装を着たり

可愛いポーズを取ったりまさにプリクラ化。


女学院時代の思い出が欲しくて始めたお店が、今や高位貴族のご婦人方が

ご学友だった方たちと弾けにやってくるお店に成長。

王妃様もお忍びでやってきた時はさすがに絵師と2人震えたけれど

満足いただけたようで、それからは「お茶会にご招待」という名の

超優良顧客となっていただけている。


クロエ自身はプリクラの代わりになれば面白いな程度だったのが

絵の描き上がりまで待つ間に楽しむお茶やお菓子のために製菓部門を立ち上げ、

お揃いの衣装のために衣装部門も立ち上げ、

ヘアメイクもその場でお直しできるようにと美容部門も立ち上げ、

額縁やさらに絵を飾るための部屋を整えたいなんて希望を叶えるために

なぜか内装を手掛ける部門まで立ち上げることになった。


え? 私、単なる女学生なんですけど。

商会の各部門の売れ行きも好調で、釣書がどんどん届く。

いや、婚約者いますけど。


婚約者はというと、もっとやれ!楽しめ!金なら出してやる!と

まぁ私のやることにを一緒にというか、若干煽りながら楽しんでる。

多分、というか絶対に私は世界で一番しあわせなんだと思う。

さぁ、次は何をして楽しもうか。

友人たちの笑い声の中に飛び込んだ。










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