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監獄

今日あったこと、その中で出てきた彼女とはつまるところ、エア彼女である。え?エア?エアってどういうこと?て、思われるかもしれない。皆には見えないけれど僕には見える。僕だけの彼女である。だから、母やクラスメイト達といても彼女は他者に話かけないし、話かけられない。つまりだ。そこにあるようでない、僕にとっては居て、他者からはいない、都合のいい空虚なものである。それでも僕は愛している。彼女のことを。そう思ってベッドの中の彼女に口付けをした。愛している。誰よりも。翌朝、いつものように朝食を食べて顔と歯を洗って学校へ行く。もちろん彼女と一緒だ。彼女は手を繋ぎながら登校しようといって僕は少し照れながら彼女の手を握った。学校につくと西川が話しかけてくる。偽善者め。何故僕が西川を偽善者と呼ぶか、それには理由がある。西川はいい事をしているつもりなんだろう。中途半端な善意で僕を助けた気になっているんだろう。西川は友ではない。断じて友などではない。その理由は……。

「西川ー!今度の休み遊びに行こうぜ!」

西川の友人が西川にそう言って西川を僕から話した。そう、僕は1度も西川から遊びになんて誘われた事なんでない。そして、もう1つの理由として、クラスで班わけするとき、西川は僕を誘わない。さらに、西川は体育のペア練習の時も僕を誘わない。西川が誘うのは昼食のみである。彼はいい事をするいい子のフリをしているだけのクラスメイト。つまり偽善者である。僕は彼が嫌いなわけではない。ただの偽善者のクラスメイトというだけだ。僕かひねくれているとか思うかもしれない。でも事実として西川は僕を友達とは思っていないだろう。僕はいつだって余り物なのである。そうして1日が虚無のうちに終わった。家と学校の往復の毎日である。肩掛けカバンは重い。そしてリュックのように背負う事を禁止されている。そのせいで僕は後に側弯症になってしまうのだった。通学路は2キロ程歩く地獄道。でも、彼女と入れば少しは楽しく歩ける。たとえそれが空虚な影でも……。ようやく家についても宿題を片さなければならない。自由な時間なんてほぼない。僕は学校を監獄だと思っていた。白い外観もそうだが、1度入るとそこからは授業が終わるまで出られない。そんな監獄で威張り散らす学校教師に怒鳴られながらも僕達は生きていく。否、僕1人で生きている。友もいない、味方なんて1人もいないその監獄はとても、とても、窮屈だった。1日が終わる。彼女が居てくれることだけが心のささえである。瞼を閉じて、明日の地獄へと向かうのだった。

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