6匹 デジャヴ
「うあーーーー!!!!!!!!!」
窓から差し込んでいた橙色の光が消えたとき、夏流は叫んだ。
家の中はほとんどかたずいていた。
いや、朝からこの夜までずっとかたずけていた。
「なんなのよおおお!!!!」
夏流は気が長いわけではない。
結構な短気なので、ストレス発散に・・・大声でぐちる。
「どこのどいつだこのやろーーーっっ!!!」
・・・・文句を言いながらも手は動かすのであった。
「ごほっ!うっ・・・すごいほこりっほごほ!」
夏流は、家に散らばったものをかたずけるついでに、久しぶりの掃除もしていた。
そして、ほこりをもろに吸ってしまったらしい。
咳が止まらず、なみだ目になってしまった。
「っうぐ・・・はぁはぁ・・・う~~・・・・・」
夏流は、逃げるように外にでた。
「っは~~~!くっるしー!」
夏流の咳はようやくおさまったようだった。
外には男子学生が一人で歩いていた。
「こんな遅くに下校なんて」
同じ学校の後輩だろう。
どちらかというと、かわいい感じのする子だった。
そして、ふと、あることを思い出す。
「・・・神社・・・」
このくらいの時間だと、あの人がきているはずだ。
夏流は、引き寄せられるように神社へ向かった。
神社の前には、綺麗な女の人が二人、お参りをしていた。
「やっぱり!流嘉先輩!!・・・と誰?」
夏流が声を上げると、流嘉と呼ばれた女の人は優しく微笑んだ。
「今日もありがとうございます!そちらのかたもお参りにきたんですか!?」
実際、誰かが神社にきてくれるのはとても嬉しい。
夏流が軽く頭を下げると、その女の人もぺこりと頭を下げる。
「こんにちは夏流ちゃん。今日もお姉さんは、こりずに素敵な人と出逢えるようにお願いしにきたわよ!」
この人は、折水流嘉さん。
同じ翠藍高の先輩で、すごく優しいしお茶目。
いつもこのくらいの時間にお参りしにくる。
ここは一応、恋結びの神社だ。
流嘉先輩は、『素敵な人と出逢えますように』とお祈りしているらしい。
「こっちの子は千茅氷雹ちゃん!」
流嘉先輩に紹介された氷雹という女の人は、とても美しくおじぎをした。
・・・氷雹って、難しい名前だなぁ。
「氷雹です。流嘉がお世話になっているようで。少し私の名前は難しいでしょうが、よろしくお願いしますわ。貴女のお名前、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
うっわ!氷雹先輩、めっちゃ綺麗!!!!
女の夏流でも見とれてしまうほどだった。
「えっと、双葉夏流といいます。この神社を管理させてもらっています」
氷雹先輩は「ご立派ですのね」と、可憐に笑った。
「さて流嘉。そろそろおいとまいたしましょうか」
「そうね。じゃあ、夏流ちゃん。うちの妹と仲良くしてやってね♪」
流嘉先輩は手を振りながら、氷雹先輩とともに帰ってしまった。
流嘉先輩には妹がいる。
夏流と同じ二年でクラスは違うが、とても歌がうまいらしい。
名前は涼芝姫歌ちゃん。
うちと同じで、親が離婚してしまったと教えてくれた。
「お母さんかぁ・・・」
無意識のうちに呟き、空を見上げた。
今日も星が綺麗だった。
そのとき。
「え・・・?」
神社の中で音がした。
ほんのわずかだが、何かが動く音がしたのは確かだ。
夏流は、忍び足で音のするほうに近づいてゆく。
・・・・・・?
??
「これって、デジャヴ??」
んなこと考えてる場合じゃないーーーー!!!!
夏流はその考えを振り払い、神社の戸をあけた!




