3匹 おおかみに会ったよ
「あっ・・・!」
いたのは、男の人だった。
暗くてはっきり見えない。
でも、いきなり夏流が来たことに驚いている様子がわかる。
そして、しだいにその男の姿がはっきりしていく。
茶色い髪を持ち、右耳には小さな十字架のピアス。
・・・そこまで見えたところで、夏流は神社の中へ強引に引っ張られた。
「っ!!??」
開きっぱなしだった戸は閉まり、口を大きな手でふさがれた。
やっぱり不審者!?
抵抗しなくては!
そう考えたときには、もう遅かった。
「っ・・・!!?」
夏流の体は男の体に包まれ、腕はその男の手で後ろに縛られた。
さらに口もふさがれ、身動きが取れない状況だった。
「・・・おい、お前誰だ?」
低く鋭い声で耳元に囁かれ、背筋が凍った。
だが、声からしてまだ高校くらいだろう。
塞がれていた口が動くようになったのに気付き、夏流は勇気を振り絞って言った。
「こっ、この神社は、あたしの私有地です!あなたこそなんですか?」
すると、男は満足げに笑い囁いた。
「誰だと思う?」
耳に息がかかる。
なんだか妙にドキドキしてきて目を強くつむった。
だが次の瞬間、目を見開くほどびっくりする事態がおこった。
「んっ!」
耳をなめられた。
そして、軽くかまれる。
ええええええ!!!???
耳が熱くなっていくのがわかる。
必死に抵抗しようとしたが、力が抜けて動けない。
夏流の頭はもう、ごちゃごちゃだった。
そこに追い討ちをかけるように、その男はまたもおかしな行動をしはじめた。
「ななな何するの!?」
「何って、別に」
そいつは、夏流のびしょびしょの服の中に手を入れ始めた。
その手つきは、なんともいえないくらいエロい。
「やっ・・・」
腰からへそをとおって、胸を触ろうとしてきた。
もうだめだ・・・。
夏流にはもう限界がきていた。
「・・・きもち、わるい」
その一言で、男は手を止めた。
「・・・・お前ん家、どこだよ?」
夏流はまだほてっている顔でその男を見た。
表情ははっきりしないが、機嫌が悪いのは確かだ。
夏流は、教えてもいいものなのかわからなかったが、腰が抜けて動けない自分に気付いたため、「すぐそこ」と小さく言った。
「わかった。行くぞ」
男はそういうと、夏流をおぶった。
「!!??」
少しびっくりしたが、その男の背中は温かく、なぜだか安心してしまった。
誰だかわからない、『男』。
いや『おおかみ』は、何を考えているのだろうか?
雨はいつの間にか、やんでいた。