12匹 抱擁
おそくなりました^^;
そんなこんなで、朝がやってきた。
「・・・・・・」
今日こそは学校にいこうと思って早起きしたはいいが。
夏流は朝から頭を悩ませていた。
それはなぜかというと・・・。
「なんで、神様・・・いないの?」
なんと、家のどこを探しても神様がいなかったのだった。
置手紙もなにもない。
神様はもうこの世におりてきてはくれないのだろうか?
夏流はとても不安な気持ちだった。
そんなとき、夏流しかいなくなってしまった家に、インターホンの音が誰かきたことを告げた。
もしかして神様!?
希望を胸に戸を開けると、そこには・・・。
「おはよう、夏流ちゃん。あの・・・朝から迷惑だったかな・・・?」
「もえぎ?」
そこには、かわいく結ばれたみつあみを揺らし、おどおどとあいさつをするもえぎがいた。
「どうしたの?なんかあったっけ?」
神様ではなかった。
少し残念な気持ちを押し殺し、大好きな親友が訪ねてきてくれたことに疑問を抱く。
「特になにかあるっていうワケじゃないの。ただ、夏流ちゃん昨日学校お休みしたでしょ?それで、昨日の放課後に寄れなかったから・・・迷惑だった?」
少し緊張気味に言葉をつむぐもえぎに、感動してしまった。
夏流はいきおいあまってもえぎに抱きつく。
「もえぎ~!ありがとう!!すっごくうれしい!!!!」
「んっ・・!!あ、なっ、夏流ちゃ・・・!!そんな、強く、だ、抱きしめっ、られた、ら・・・」
いきなりのことで戸惑っているのか、真っ赤になりながらもじもじしているもえぎを、さらにぎゅっと抱きしめると、もえぎは妙に恥ずかしがりながら夏流の服をぎゅっとつまんだ。
そんなもえぎがかわいくてしばしのあいだ抱擁を楽しんでいた。
すると、もえぎの呼吸はだんだん乱れていき、体は熱っぽくなっていた。さらにいうと、「んっ」とかいう、少し濡れた吐息も漏らしていた。
そんなに苦しかったかな・・・?
少し反省しつつもえぎから体を離すと、もえぎは名残惜しそうに潤んだ瞳で夏流を見つめていた。
「ごめんね、ちょっと強くだきしめすぎたかな」
「えっ!?いやあの、そんなことっ・・・!」
―――夏流ともえぎが、そういう関係だというわけではない。
夏流は純粋に、友達としてもえぎを抱擁していた。
だが、夏流は気付いていないが、もえぎがレズっぽい感情を抱いているのは確かだと思う。
すると、どこからともなく。
「な~~つる~~~♪会いたかったよ~~~~~!!!!!!!!!」
男の人の声が聞こえたかと思うと、視界がまっくらになった。
きっと抱きつかれたのだろう。
夏流は、この声の主をよくしっていた。
「隼斗兄。いきなり抱きつかないでよ」
「なにいってるんだ!さっきまでもえぎ君と抱き合っていたではないか!!僕ともいっ」
「隼斗兄!いきなりだきつかないでったらっ!」
「のわっっ!!!」
夏流はその男にこぶしを入れた。
男は風になびく茶色い髪を整えていった。
「まったく、夏流のツンデレぶりも、ここまでくればいいほうか」
彼は、藤川隼斗。同じ学校の三年で、一応先輩。
夏流の親が離婚するまえからの付き合いで、夏流のお兄ちゃん的存在。小さな頃から夏流をかわいがってくれる。なにやら隼斗の父と夏流の父は同級生だったらしく、家族ともどもとてもお世話になっている。
男嫌いの夏流も、ずっと小さいころから一緒にいるとさすがに『キライ』という感情は持っていなかった。
一見普通の苗字だけど、なんだか凄い大豪邸にすんでいて別荘もいくつもある大金持ち。
そしてはたからみれば、紳士的でイケメン、おまけに秀才のお坊ちゃまなのだが・・・。
「夏流!!今度はいつうちに遊びにくるんだい!?いろんな服を用意してるぞ!!」
「わわ、私もお邪魔していいですか!!!?」
「もちろんだとも!!!もえぎ君も、夏流の狂おしいほど愛らしい姿を!!」
「はいっっ!!!」
一種のコスプレヲタクである。
しかももえぎまで・・・。
まぁ、ただ着せ替え人形になっているつもりもなく、夏流自身もそこそこ楽しんでいるので、いやとはいわない。
主に、隼斗が集めたコスチュームを着るというだけの話しだが。
「ほら、そろそろ学校にいかないと遅刻するよ?」
困ったような笑顔を二人に向けると、夏流は歩き始めた。
これから夏流のツンデレ、本領発揮です!!