ブラック・マジック・ブラザーズ 毒蠍編・上
ブラック・マジック・ブラザーズ短編第二弾!
魔術バトルのダークファンタジー!
深夜の建設途中のショッピングモール。静寂の包む闇の世界で魔術師同士の決闘が繰り広げられていた。
その時、巨大な毒蠍に追われるロイドはまさに危機に瀕していた。
「畜生め!」
走りながらロイドは迫りくる巨大な毒蠍に向けて銀のリボルバーの引き金を引いた。だが、銀の魔弾は巨体に似合わず素早い毒蠍にギリギリで回避される。魔弾は残り少ない。頼りになる弟のヒューイも今はいない。
「ハハハ、苦しめ苦しめ! 我が積年の怨みはこんなものではないぞ!」
毒蠍を操る魔術師の高笑いがどこからか聞こえる。必死に逃げるロイドの姿を何処からか見て楽しんでいることだろう。
「チッ、あの野郎、ふざけやがって!」
ロイドは苛立っていた。まんまと敵の罠にはまった自分の愚かさをこんなに呪ったことはない。
「負けるわけにはいかないってのによ!」
背後の毒蠍による鋭いハサミによる攻撃を受けてロイドは吹き飛ばされた。壁に叩きつけられる。瞬時にロイドとの距離を詰めて迫る巨大な毒蠍。長い尻尾の先端にある鋭い毒針がロイドに狙いを定める。
(賭けてみるか、このタイミングに!)
もはやここまでか、と思われたその瞬間、ロイドの銀のリボルバーから発射された銀の魔弾が、毒蠍の巨体を貫き、その胴体にポッカリと穴を空けて吹き飛ばす。ロイドは巨大な毒蠍から吹き出た体液を頭から全身に浴びていた。
「何だと?」
巨大な毒蠍を操る魔術師がロイドの前に現れる。頭からフードを被った異様な雰囲気の男だ。
「次はテメーだ、蠍野郎!」
ロイドは顔に付着した体液を上着の袖で拭いながら怒鳴っていた。その眼には明確な殺意があった。
リボルバーに弾を込める。出し惜しみはなかった。
<遡ること数時間前>
探偵事務所に頬の痩けた青白い肌の中年の男が依頼人として現れたところから、この物語ははじまる。
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