18.あとの祭り
枯れた桜の前に残されたのは、仮装した三人と、刑事と罪人だった。
「石川、お前は俺と来てもらうからな?」
公平の言葉に、石川は口をつぐんだ。
そのやり取りを見ながら、貴仁は面白そうに口を開いた。
「そいつが作った呪符にお前の名前を見た時、マジ驚いたよ」
その貴仁の言葉に、祐理が被せる。
「私は最初に会った時に気づいてたけどね」
公平の動きが一瞬止まる。
「はい?」
最初とは東京駅で会ったあの時だろうか。あのセーラー服の女子は、やはりそうだったのだと頷く。
「あの人、鵺を私と間違えて声かけたんだよ〜危なかったわぁ」
公平はとっさに振り返る。
「その時から鵺とか、この流れわかっていたのか?」
祐理は、まさか、という顔をした。
「いいえ、ただ、妖がいるなぁと思っただけ」
公平は口ごもる。もしかしたら、鵺は自分を殺しに来ていたのかもしれなかった。危ないとは、そっちの意味だったとは。まぁ、本当のことを言われても、あの時の自分は信じられなかったが。
「中原一樹の父は、石川議員の政敵。後藤明の父は医師会の会長で、石川議員の政治献金の証人に立とうとしていた。つまり、君の父の邪魔になる人間の息子だった」
これらは、調査部に依頼した調査結果だ。で、なんで自分が?と公平は思う。自分はとうに捜査から外され、左遷された男だ。
「正義感が強くて、引かない男だから。諦めずに狙ってくると思ってんでしょ?で、菅原公平をリストに加えた」
公平の思いを察し、祐理が呟く。
「お前、妖怪を騙すなんて恐ろしい奴だな。おおよそ、鵺の力を得て、この国にひと泡吹かせようとしたのだろうけど」
貴仁は呆れた顔で、石川を上から見下した。妖よりよっほど醜悪な男だ。鵺に絞め殺されれば良かったのに、と心の中で呟いた。
「何だよ!僕は何もしてない!証拠あるのかよ!裁判で認められる証拠が!呪いで裁判できるのかよ!それに、オヤジならお前らをどうとでもできるんだかな!」
石川は嘲笑った。万が一、明るみになっても訴追されないように考えて動いてきた。抜かりはない。
ビシッ!
祐理は扇を石川に思い切り投げつけた。それは石川の顔面を直撃した。
「何もしてないだと!あんたがこの桜の木を利用しなければ、亡くならなかった人がいる。罪を犯さず、傷つかなかった人がいる!」
祐理は身を乗り出す。
「証拠なんて、公平が必ず揃えるわ!あんたの親父だって、公平は諦めない!それに、私達だって、アンタ達を許さないんだから!!」
貴仁とハクも冷ややかな視線を送りながら、大きく頷いた。公平は軽くため息をつと、静かに口を開く。
「石川、俺は事実と証拠を必ず揃えて、罪を償わせるからな?」
その凛とした姿に、石川は畏れを抱いた。
「何なんだよ!お前ら!」
焦った石川の言葉に、公平以外の3人は声を揃えて言った。
「協力者ですけど、なにか?」