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3/3

森と草原に挟まれた都市モリブ

「そ、それよりさっき引いたガチャの詳細を確認しないとな。結構ダブりもあったから、種類ごとに一つ出すか。」


 宝玉が光るとアイテムが出てくる。


「草に牙に爪に毛皮にその他装備品...だな。」


「まずは、素材から見ていきましょうバクラ様。」


「そうだな。」


【R】治癒草

 治癒の力を秘めた薬草

 煎じて飲めば多少は傷の治りが早くなるだろう


【R】活力草

 活力を湧きあがらせる薬草

 煎じて飲めば疲れも少しは癒えるだろう


【R】狼の牙

 何の変哲もない狼の牙

 装飾品にはぴったりの大きさ


【R】狼の爪

 何の変哲もない狼の爪

 装飾品にはぴったりの大きさ


【R】狼の大牙

 普通の牙より一回りほど大きい狼の牙

 群れの長の象徴的な部位で耐久性は普通の牙より遥かに高い


【R】狼の艶毛皮

 狼の綺麗な灰色の毛皮

 野生の毛皮とは思えぬほど艶がかっており、触り心地は抜群


【SR】草狼の鉤爪

 グラスウルフが草原を疾駆する要となる鉤爪

 装備品に使用すれば風を切る素早さを感じることができるだろう


「こんなもんか...基本的にはただの素材って感じだな。」


「次は、装備品になりますね。」


「これが本命だな!」


 残っているアイテムの、皮ひもで編まれたようなサンダル、風の意匠が刻まれた鞘に入った短剣、赤い宝石の嵌ったシンプルな指輪、遠吠えする狼の意匠が刀身に刻まれた大振りの槍をそれぞれ見ていく。


【SR】疾風の靴

 速度上昇、走行時疲労軽減

 風を切る素早さを手にできる靴

 装備者は走行時に疲れを感じにくくなる


【SR】疾風の短剣

 速度上昇、切れ味上昇

 鋭い風のような切れ味の短剣

 装備者に風の如き素早さを与える


【SR】体力の指輪

 体力上昇、自動回復(微)

 体力を上昇させる指輪

 微弱だが傷を癒す力が秘められている


【SSR】草狼の風槍

 風属性、重量軽減、速度上昇

 風の力を宿す狼の意匠が施された槍

 装備者に羽のような軽さと風の如き素早さを与える

 草狼は風を切り草原を疾駆する

 まるで風を纏い味方にしているかのように


「つんよ...かなり強いな。とりあえず手に入った武器が槍ってのが良い。

 短剣もルナが使えるから無駄がないな。」


「ワタクシとしましては、体力の指輪が一番でございます。万が一にバクラ様が傷を負ってしまわれても治療を行う時間を稼ぐことができましょう。」


「あとは魂...謎のアイテムだな。」


 緑色に揺らめく炎のようなアイテムを触る。


【SSR】草狼の風魂

 行動速度上昇(永)、スキル付与(疾駆、風纏い)

 草狼の生きた証が凝縮された魂

 草狼の素早さと極めた技を継承できる

 群れの長だった彼は草原の風を纏い駆け、

 全ての動きは誰よりも早く敵うものはいなかったという


 詳細が流れた直後に、バクラの脳内に一つの映像が流れる。


 広大な草原、そこを走る草狼の群れ、数々の狩りの様子、その中でもひと際大きい草狼に焦点が合う。

 その個体は映像に出てくるどの個体よりも強く全てを蹂躙していた。

 やがてその個体は老い、多くの草狼達に見送られている。

 その死の瞬間、草狼と目が合う、そのすべてを見透かすような目に何故か負けるものかという思いが強く沸き上がり渾身の力で睨み返す。

 睨みを受けてその草狼はニヤリと笑ったかのように見えた。


「はっ!い、今のは...。」


「バクラ様どうされましたか?」


「いや、多分このアイテムのせいだと思うんだが...あれアイテムは?」


「お触れになられてすぐにバクラ様に吸い込まれていきました。」


「ああ、やっぱり。まぁ内容は優秀なステータス上昇とスキル付与アイテムだったよ。

 コレクト魂のステータスオーブとスキルオーブを混ぜて強化したみたいな超アイテムだった。」


「それはすごいアイテムでございましたね。」


「さ、全部のアイテムを確認したことだし…着替えようか。」


 ルナティックは未だボロボロのゴシックドレスを着ていたのでバクラは目のやりどころに困っていた。


「ええっととりあえず、漆黒シリーズと死の足音…かな?

 俺はこの疾風の靴と体力の指輪を付けるから。」


「かしこまりました。では着替えさせていただきますね?」


「ああ、っていきなり脱ぐなぁ!う、後ろ向いてるから!」


「はて?生命を宿したとはいえワタクシはいまだ人形にございます。何を恥ずかしがる必要がございますか?」


「いいから早く着替えてくれ。」


「かしこまりました。」


 ルナティックの着替える衣擦れの音に思考を持っていかれながら疾風の靴を履き、体力の指輪を填める。


「着替えが終わりました。」


「早いな、今俺も履き替えた所だ。」


 振り向くと、印象が著しく変わったルナティックがいた。

 血の跡の着いたボロボロのゴシックドレスに裸足、錆び付いて欠けたナイフを手に持っていた時は完全にホラーの住人のようで人形らしさの残った顔は狂気を引き立てていた様だったが、黒一色のメイド服は、陶磁器のような真っ白の肌がよく映えて芸術的な容貌は、クラシックなメイド服に絶妙な調和を奏でていた。


「バクラ様、どうされましたか?」


「あ?え...い、いやぁなんでもないよ。さて次は武器の分配だな。」


 武器は血吸いの短剣、疾風の短剣、草狼の風槍がある。


「まぁ、普通に短剣はルナに槍は俺にって感じだな。」


「装備を頂けるのでございますか?」


「ルナの攻撃力の上昇はとりあえず急務だから、貰ってくれないと困る。」


「有り難き幸せでございます。」


「そもそも1番はレア度が高い物は全部俺が貰ってるし、妥当だろ。」


 そう言ってルナティックに疾風の短剣を渡す。


「と言うか、さっきまで持ってた短剣はどこ行ったんだ?」


「暗殺のスキルに大きさが30cm以下の武器を隠す技能がございまして、ほらこの通り。」


 ルナティックは手に持った疾風の短剣を隠すようにすると疾風の短剣は何処かへ消えてしまう。


「うおっ、消えた。凄いなそれ!」


「消した訳ではなくただ隠すことと取り出すことを瞬時に出来るだけではありますが、とても優秀な技能でございます。」


「いやー便利だな。そういえば俺もスキルを貰ってたな。確認してみるか。」


位階(レベル)1】神崎バクラ

 スキル:運勢の渦、魂狩り、疾駆、風纏い

 ※疾駆:無呼吸状態の時、走行速度超上昇

  風纏い:一定以上の強さの風が周囲に存在する時その

  風を全身に纏うことで様々な強化を受ける


「おおー、凄そうなスキルが付いてるな。試したい所だが暗くなる前に、集落とかを見つけとかないと野宿になっちまうから、とりあえず移動しながら試そう。全体的に走る速度が上がるやつが多かったし、移動しながら確認したら分かりやすいだろ。」


「そうでございますね。」


「じゃあ、この槍は収納してと...じゃあちょっとスキルの確認をしてみるわ。」


「お気を付けくださいませ。」


 疾駆のスキルを確認するために息を止めて走る。

 すると、走り出した時に景色が引き伸ばされたかのように過ぎ去り驚いて足を止めると瞬きの間に数十メートルも走り抜いていた。


「は、速い...。」


 遠くに見えるルナティックが走りよって来る。

 その速度も相当に早かったが、さっきまでの速度と比べると天と地の差だった。


「素晴らしい速度でございました。しかし、ワタクシを置いて行くことはお辞め下さいませ。ワタクシの与り知らぬ所でバクラ様が傷を負う可能性を考えると心が苦しくなりますので。」


「あ、ああ。分かったよ。」


 早口で喋るルナティックの圧にやられるバクラ。


「でも、とりあえずここまでの速度が出るなら何とか日が沈むまでに村くらいは見つけられそうだ。疾風の靴で走る時に疲れにくくなるみたいだし。」


「では、駆けながら参りましょう。」


 2人で草原を駆けること早数時間。

 2人は森の外縁を走っていた。


 「森に沿って走っていれば、見つかりそうだ。」


 「川を見つけることが出来れば、ほぼ確実に集落が見つかりそうでございますが...。」


 「いやいや、川の周りは野生動物の水飲み場だろう。

そもそも、この世界には何がいるか分からないんだから...。」


 突然一点を見つめ立ち止まるバクラ。


 「バクラ様、どうかされましたか?」


 「あれ、道みたいだな。土が剥き出しだ。」


 バクラが見つめていた場所に寄って地面を確認する。


 「やっぱり、踏み固められた土だ。しかも轍がしっかり残ってる。使い古された道じゃなさそうだな。」


 「でしたら...。」


 「ああ、どっちかに集落か何かがあるな。」


 「ですがどちらに行けばいいか...。」


 2人で左右を見渡し、一頻り悩む。


 「よし!こうなったら、古代から伝わる迷った時の対処法だ!」


 「そのようなものがあるのでございますか?!」


 そう言うとバクラは、宝玉から風槍を取りだし地面に立てる。


 「迷った時の棒倒しだ。棒じゃなくて槍だが、穂先の重さで倒れやすくて良い感じだろ。」


 「運試しでございますか、バクラ様らしくてよろしいと思います。」


 「行くぞ!」


 風槍が倒れたのは...右だった。


 「右か、じゃあさっさと進もう!見つからなかったらルナを背負って逆方向に全力疾走したら何とかなる。」


 「バクラ様のお手を煩わせるのは、心苦しくありますがそれが最善であるならば。」


 今度は街道と思わしき道を駆ける。

 もう日が沈み出そうとしている頃、遠くに馬車が走っているのが見えた。


 「あ、馬車じゃないあれ?」


 「ええ、馬車であると思われます。」


 「ちょっと速度を落として、話しかけてみるか。」


 前を行く馬車に小走り(それでも十分早い)で近付き話しかけるバクラ。


 「おおーい!ちょっとそこの人!質問していいか?!」


 「んえ?何だ、あんたら。随分軽装だな、冒険者か?」


 「え?あー、そうだよ。冒険者、だよ。」


 馬車に乗っていたのは気難しそうな親父さんだった。


 「なんか怪しいなぁ。あんたら、冒険者だってんなら武器はどうしたんだよ。」


 「少しの間に荷物を何者かに盗まれてしまいまして、今の手持ちがこの2つの短剣のみとなってしまったのです。」


 「何?そりゃあ大変だなぁ。しかし、この先へ行っても入街料がないんじゃ街へ入れないぞ。タグはどうした。」


 「あー、水浴びしてる途中に取られちまったもんでタグも無いんだよ。」


 「あんたら冒険者じゃないな?冒険者がタグを外すなんて有り得ねぇぞ?さては、これからなるつもりだったんだろ!田舎から出てきたばかりだからって見栄張りやがって。何かないのか。しょうがねぇから、俺が金に変えてやるよ。モリブの街は入街料が安いからな。せっかくだし、素泊まりの木賃宿ぐらいだが宿代は出してやろう。」


 勘違いされて誤魔化しに成功する。


 「いやー、やっぱ分かっちまうのか!なんも知らねぇんで見栄張っちまって。」


 「申し訳ございません。」


 「ったく、そっちの嬢ちゃん見習いやがれ。ほら、なんかあるなら出しな。なんもないならとりあえず入街料は払っといてやるよ。あれは身分証にもなる冒険者タグ貰ったら返ってくるからな。」


 「(どうする、ルナ。とりあえず大牙出しとくか?)」


 「(はい、大牙は1本だけしか出ていませんしそこそこの金額で取引できると思われます。)」


 「助かるぜ!俺らが唯一持ってる金になるもんはこれよ!」


 「ほう...小僧これどこで拾った。」


 「綺麗に根元から取れてるだろ?金になると思って村から出る時にかっぱらって来たやつよ。荷物泥棒が何故か持ってかなかったからこれが唯一の金になるもんよ。」


 「ぱぱっと見ただけだが、かなり硬い。上質な牙だな。まぁ魔力を秘めている訳じゃあなさそうだから、使い道はちょっとしたナイフとか装飾品って所か。いい品だな、これなら木賃宿じゃなくてちゃんとした宿に泊まれるぞ。まぁ1泊だけだがな!じゃあ、これがお代だ。まずは入街料銀貨1枚、次に宿代銀貨3枚だ。田舎から出てきたばっかりだろう、銀貨なんて見たことあるかな?」


 「いやぁ!ないない!ありがてぇ!これで寒空の下野宿しなくて済むぜ!」


 「ありがとうございます。」


 「感謝するなら金が入ったらグドラ商店で買いもんしてくれよ。おっと、そろそろ日が沈むな。門がしまっちまう前にさっさと行くぞ。」


 馬車について行くこと10数分見上げるほどの城壁が見えてくる。


 「すげー、でけぇ。」


 「はっは!ここ目当てで旅をしてきたんだろ?ようこそ!大森林と大草原に挟まれた都市モリブへ!」




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