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第6話 模擬戦 中編

前回のあらすじ

勇者はポンコツ(仮)

 

 驚いている生徒達を余所に、俺はセンセイの方を見やる。


「そういうわけで……学院長。模擬戦の審判を務めていただいてもよろしいですか?」

「よかろう。ルールはどうする?」


 センセイにそう聞かれ、俺は顎に手を当てて思案する。


「そうですねぇ……俺は生徒全員を倒したら勝利、生徒達は俺に一撃でも入れられたら勝利……でいいんじゃないですか?」

「その条件だと、メテオライト先生が圧倒的に不利じゃないのか?」

「むしろちょうどいいハンデじゃないですか? 休業中とはいえ、俺は仮にも勇者なんですから」

「……シンがそれでいいなら、アタシから特に言うことはない。さて……F組の諸君からは何か意見はあるか?」


 センセイがそう尋ねると、ルルがおずおずと手を挙げる。


「なんだ?」

「あの……メテオライト先生は一撃を入れられたらわたし達の勝ちって言ってましたけど、その一撃って……」

「なんでもいい。殴っても構わないし、魔術を当てるのでも構わない。なんなら、俺を殺しちゃっても全然問題ない」

「……最後のだけは遠慮しておきます。ですけど……とにかくどんな手段を使ってでも先生に一撃入れられたらわたし達の勝ち、ってことでいいんですよね?」

「ああ、その認識で構わない」

「他に質問ある奴はいるか?」


 センセイはそう尋ねるけど、誰一人として手を挙げる者はいなかった。


「それじゃあみんな、所定の位置について」


 センセイにそう言われ、俺は生徒達から距離を取る。

 そして腰のベルトにずっと挟んでいた杖を手に取り、右手に構える。

 杖の長さはだいたい、長剣と同じくらいだ。


「え? 先生って、杖使うんですか?」


 するとリースが、そんな質問を投げ掛けてくる。


「ああ、そうだ。俺はリースが言うところのポンコツ勇者だからな。杖の補助がなければ、満足な威力の魔術が使えない」

「……ポンコツだって言ったこと、気に障りましたか?」


 リースは申し訳なさそうな顔をしながら、そう言ってくる。

 彼女の言葉を否定するように、俺は首を横に振る。


「いいや? むしろリースの評価はまっとうなものだ。リースが気に病む必要はない」

「はい、分かりました」

「さて……準備はいいか?」


 センセイがそう確認してきたので、俺は無言で頷く。

 生徒達も全員無言で頷いて答える。


 俺達の答えを受けて、センセイは右手を高々と挙げる。

 そして――。


「それでは……始めっ!!」


 右手が勢いよく振り下ろされ、模擬戦が始まった―――。




 ◇◇◇◇◇




 この模擬戦の審判を務める学院長の右手が振り下ろされて、メテオライト先生との模擬戦が始まった。


 ……先生はいったいどんな手を打ってくるんだろう?


 そんな疑問を抱きつつ、あたしは腰を落として身構えていると、あたしのすぐ横を光るナニカが走り抜けて行った。

 その直後、あたし達の後ろにある修練場の壁が、ドガンッ!! と大きな音を立てた。


 みんなして背後を振り返ると、壁にはクモの巣状の大きな亀裂が入っていた。


「ヤバッ……威力の調整ミスった……」


 そんな声があたし達の後ろから聞こえてくる。

 あたし達は正面を振り向くと、そこには「やっちまった」とでも言いたげな表情を浮かべているメテオライト先生の姿があった。


 彼は右手の杖をあたし達の方に向けた状態で立っていた。

 あの杖の先端から魔術を放ったのは明らかなんだけど……。


「今…………無詠唱でした?」


 あたしは恐る恐る、メテオライト先生に尋ねる。


「あ〜……うん。いつものクセで、つい……」


 メテオライト先生は頭をポリポリと掻きながら、そう申し訳なさそうに答える。


 魔術を―魔法もだけど―無詠唱で発動するのは、かなりの高等技術だ。

 そんなことをまるで呼吸するかのように気軽にやってのける先生は、さすがは『勇者』と言ったところか。


「次からはちゃんと詠唱して魔術を発動させるから、どっからでも掛かってこい」


 先生は右手の杖をフリフリと振りながら、攻撃してこないあたし達をそう急かす。


 ……詠唱するのも、手加減の内なんだろうなぁ……。


 内心そう思いながら、勇者の胸を借りるつもりで、あたしはメテオライト先生に向かって魔術を放った―――。






本作品のメインヒロインは、リースとルルの二人です。

なので必然、シンとの絡みも多くなります。




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