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第5話 模擬戦 前編

前回のあらすじ

初めての授業を行った

 

 王立魔術学院は、各種施設や設備も充実している。


 新校舎に隣接している大図書館は、王国でも五指に入るほどの蔵書数を誇る。

 新校舎の一階部分にある食堂はメニューが豊富で、生徒達の憩いの場にもなっている。


 旧校舎にある実験室には、最新鋭の設備が備え付けられている。

 ちなみに職員室も、旧校舎の二階にある。学院長室は三階だ。


 そして両校舎からやや離れた場所に、修練場が三つある。


 第一、第二修練場は長方形の形をしていて、第二修練場の方には屋根が付いている。

 そして両修練場共、観客席が備え付けられている。


 第三修練場は少し特殊で、王国の国有地を借り受けている。

 この国有地にはちょっとした大きさの森があり、草原や岩場があったりと、実戦向きの授業が行われる際に使用される。


 そして一年F組の生徒達は、第一修練場に集まっていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 メテオライト先生に言われた通り、あたし達は第一修練場に集まっていた。


 ……二時間目と三時間目の授業は実技だったけど、ここでいったいどんなことを教えてくれるのだろう?


 そんなことを考えていると、隣から声が掛けられる。


「先生はわたし達に何を教えてくれるんだろうね、リンちゃん?」


 そう尋ねてきたのは、クラスメイトでありあたしの幼馴染兼親友でもあるルルだった。

 リンというのは、ルルがあたしに付けた愛称だった。


 あたしはそちらを向きつつ、彼女の質問に答える。


「さあ? でも、落ちこぼれのあたし達でも使うことが出来る、すごい魔術でも教えてくれるんじゃないの?」

「そうかなあ?」

「あたしも分からないけど、そうだったらいいわね」


 すると修練場の通用口から、メテオライト先生がやって来た。

 彼の姿を見て、あたしだけでなく駄弁っていた他のクラスメイト達もお喋りを止める。


 先生はゆったりとした足取りで、あたし達の前に立つ。


「みんな集まってるな? サボりはいないよな?」

「はい。みんないますよ、先生」


 先生があたしの方を見ながらそう尋ねてくるので、あたしは頷き答える。

 あたしの答えを聞き、先生は一度納得したように頷いてから、みんなの方に目を向ける。


「そうか……。それじゃあこれから実技の授業を始めるんだが……その前に一つ言っておくことがある」


 先生はそう言い、あたし達の間に緊張が走る。


 ……まさか、落ちこぼれのあたし達に教えられらるような魔術はないとか?


 あたしは最悪の想像をしていたけど、現実はあたしの想像を遥かに越えていた。


「実は俺……ちょっとした事情で雷属性の魔術しか今は使えないんだ。だからみんなに多種多様の魔術を教えることは出来ない。スマンな」


 そう言いながら、先生はすごく申し訳なさそうな顔をする。

 だけど……。


 …………………………え?


「「「ええええええぇぇぇぇぇぇ!?!!」」」


 あたしを含めたクラスメイト全員の驚愕の声が、第一修練場に反響した―――。




 ◇◇◇◇◇




 ……いくらなんでも驚き過ぎじゃないか?


 俺は両手で耳を塞ぎながら、そんな感想を抱く。

 すると真っ先に驚きから復活したらしいリースが、恐る恐ると言った感じで尋ねてくる。


「え? あの、それじゃあ……あたし達には誰が魔術を教えてくれるんですか?」

「それは――」

「アタシだ」


 俺が答えようとしたその時、俺の後ろからセンセイが答えた。

 その答えを聞いて、リースは驚きで目を見開く。


「え? 学院長自ら……ですか? というか、さっきまで学院長いませんでしたよね?」

「何を言うか。アタシは初めからシンの後ろにいたぞ?」

「え? でも……」

「認識阻害と隠密の魔術を使っていたからな。分からずとも無理はない」


 センセイはそう、やや自慢気に答える。


 センセイの言った通り、センセイは初めから俺の後ろにいた……生徒のみんなからは認識されないようにして。

 さらに言えば、さっきの授業中も認識阻害と隠密の魔術を使って、教室の後ろから俺の授業風景を見学していた。


 するとリースはセンセイから視線を外し、俺を見てくる。


「ええと……なんとなくは分かりました。ですけど……メテオライト先生は本当に勇者、なんですよね?」


 そう尋ねてくるリースの瞳には、疑惑の色が浮かんでいた。

 彼女だけでなく、他の生徒達も似たような眼差しを俺に向けていた。


 生徒達の眼差しを受け止めつつ、俺はリースの質問に頷いて答える。


「ああ、本当だぞ?」

「でも、雷属性の魔術しか使えないんですよね?」

「ああ、今はな」

「非属性の魔術も使えないんですか?」

「防御と回復しか使えないな。他はからっきしだ」

「……先生ってひょっとして、ポンコツ勇者ですか?」

「ポンコツかどうか試してみるか?」


 俺の返しが意外だったようで、リースは目を丸くする。


「え? それはどういう……」

「俺とF組の生徒全員で、模擬戦をしようって言ってるんだ」

「「「はああぁぁぁ!?!!」」」


 俺の言葉に、生徒達は再び驚愕の声を上げた―――。






シンがポンコツ(仮)なのは、彼が勇者を休業した理由と深い関わりがあります。

その原因は追々明らかに……。




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