第2話 一年F組 前編
前回のあらすじ
初出勤した
メイオール王国にある王立魔術学院は、国内で唯一の魔術学院である。
そのため、毎年行われる入学試験の倍率は常に高倍率であった。
そしてその試験を無事合格し、定員九十人という狭き門をくぐり抜けた生徒達は、紛れもなくエリートに分類される。
だがしかし、そんな彼ら彼女らも、入学時のクラス分けというふるいによって、優等生と劣等生という括りに分類されてしまう。
それは卒業するまでの三年間、変わることはない。
そして劣等生のみが集うのが、F組だった―――。
◇◇◇◇◇
王立魔術学院の校舎は、新校舎と旧校舎の二つがある。
新校舎は四階建てで、旧校舎は三階建てだった。
新校舎では主に座学が行われ、旧校舎では実技科目が行われる。
二つの校舎は二階部分が渡り廊下で繋がっていて、上空から見ると「エ」のような形に見える。
そして新校舎の四階の一番端の教室が、一年F組の教室だった。
教室の造りはどのクラスも同一で、教壇と大きな黒板があり、生徒達が座る座席は階段状になっていて、どこに座ろうとも黒板が見えるように設計されている。
そしてその最前列に、二人の少女が座っている。
「今日やって来る先生って、いったいどんな人なんだろうね?」
そう言うのは、薄水色のロングヘアーにアイスブルーの瞳をした少女だった。
彼女を一目見た人達は誰もが彼女を美少女だと認めるが、胸は同年代の平均よりややボリュームに欠けていた。将来に期待したいところだ。
「さあ? でも……学院長の知り合いだって噂だよ?」
少女の質問に答えたのは、彼女の隣に座るピンク色のセミロングで緑色の瞳をした少女だった。
薄水色髪の少女とは対照的に、年齢に見合わないほど豊かな胸をしていた。
薄水色髪の少女は、ピンク髪の少女に聞き返す。
「それって本当?」
「うん、たぶん……。A組の人達が噂してたのを偶然聞いちゃったから」
「そう……」
すると朝のホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り、教室の前の方にあるドアから人が入ってくる。
一人は、この学院の学院長である『賢者』オリビア・ムーンレイクだった。
もう一人は、白髪赤目の青年だった。
その青年は、この学院に勤める教師陣が着用する黒いローブを着込んでいた。
彼が新しい担当教師なのだろうか?
薄水色髪の少女が内心そう疑問に思っていると、教壇に立ったオリビアが口を開く。
「は〜い、みんな聞いて〜。今日からこのクラスの担任になる教師を紹介するよ〜」
オリビアはどこか軽い調子でそう言い、白髪の青年をF組の生徒に紹介する。
「彼が今日からこのクラスの担当教師になる、シン・メテオライトだ。もしかしたら、『勇者』と言った方が分かりやすいかな?」
オリビアがそう紹介すると、教室がシン……と静まり返る。
そして……。
「「「え……えええぇぇぇ!?!!」」」
クラス全員の驚愕の声が、教室に反響した―――。
◇◇◇◇◇
……そんなに驚くようなことか?
俺は耳を押さえながら、そんなことを思っていた。
でもまあ、仕方ないことだとも思う。
いきなり有名人が担任になったら、誰だってびっくりする。俺だってそうなる。
生徒達の驚きの声が小さくなっていったので、俺は耳から手を離す。
生徒達の方を見回すと、彼らはまだ驚きの表情を浮かべていた。
それを知ってか知らずか、センセイが俺に話を振ってくる。
「それではメテオライト先生、生徒達に自己紹介をお願いします」
「はい……」
俺は頷き、一歩前に出る。
「え〜……学院長から紹介があった通り、今日からこのクラスの担任になるシン・メテオライトです。よろしく」
「あ……あの! 質問いいですか!?」
すると最前列に座る薄水色のロングヘアーの少女が、手をピンと伸ばしながらそう尋ねてくる。
「ああ、いいよ」
「あの……あたしの記憶が確かなら、勇者様は黒い髪で赤い目をした男の人だったハズなんですけど……」
「ああ、それか……」
彼女の言っていることは確かに合っていた。
俺はある事件を境に、髪の色が黒から白に変化した。決して若白髪などではない。
「君の認識で合ってるよ。俺は元々、黒髪だった。今は白髪だけどね」
「……若白髪ですか?」
「違う!」
彼女の言葉に、俺は思わず反論してしまった。
その反応を見て、生徒全員がきょとんと目を丸くしていた。
それを見て俺は冷静になり、気を取り直す。
「コホン。……それじゃあ、俺は君達のことを何も知らないから、軽く自己紹介でもしてもらおうか。そうだなぁ……出席番号順でいいか」
俺がそう言うと、最前列に座る薄水色髪の少女が立ち上がった―――。
ヒロイン達の名前は次回に……。
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