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第18話 生徒達との交流③

前回のあらすじ

リースがやらかした

 

「むー! むーーー!!」


 リースの口を塞ぎながら学院長室を出ると、彼女が何か言いたそうに俺の手をタップしてくる。

 その要望に応え、俺はリースの口から手を離す。


「ぷはっ……。先生、どうしてあたしを庇ったり何かしたんですか!?」

「だってそうしないと、お前確実に停学になってたぞ? 最低でも二週間くらい。そうなると、来週頭から始まるクラス対抗戦に出場出来なくなっていたところだぞ?」

「うっ!?」


 俺の言葉に、リースがたじろいだ様子を見せる。


「だから今回は俺がやったっていうことにしておけ。けれど俺が庇うのは今回限りだぞ?」

「はい、分かりました……ありがとうございます」


 リースはそう言うと、ペコリとお辞儀をしてくる。


「それはそうと、リースに一つ忠告……というかアドバイスだ」

「……? 何ですか?」

「クラス対抗戦で《雷撃砲》は使うな」

「えっ!? どうしてですか!?」


 リースが驚いた様子で俺に聞き返してくる。


「歩きながら話そう。……誤解しないで欲しいのが、全く使うなとは言ってない」

「……??? それじゃあ、どういう意味なんですか?」

「切り札は最後まで取っておけっていう話だ」

「切り札……」

「ああ。《雷撃砲》はとても強力な分、対策もしやすいんだ。リースも実際に見ただろう? 俺がリースの射撃に合わせて《雷壁》で防御しようとしたのを」

「そういえば……」


 リースは形の良い顎に手を当て、さっきの模擬戦を思い出しているようだ。

 俺は続ける。


「アレは俺が、リースが《雷撃砲》を使えるのを知っていたから取れた選択肢なんだ。相手の手札を知っているのと知らないのとじゃ、自分が取る行動に雲泥の差が出てくる。だから……」

「……切り札、《雷撃砲》は使うなってことですよね。少なくとも決勝戦に進むまでは」

「理解が早くて助かる」

「それじゃあ、《雷撃砲》抜きの戦術を組まないといけませんね。頑張らないと……」


 リースはフンスとやや鼻息を荒くして、意気込んでいるようだ。

 短い間に逞しく成長した弟子(仮)の様子に、俺はほんの少しだけ口角を緩めた―――。




 ◇◇◇◇◇




 クラス対抗戦の初戦を翌日に控えた、十一月四日日曜日。

 俺は気晴らしに街中を散策していた。


 特に目的地を決めることなくフラフラとしていると……。


「へへへ……お嬢ちゃん、俺達と一緒に遊ばないか?」

「変なことはしねぇよ……ぐへへ」

「そうそう。楽しいことだよ、楽しいこと……ひひひ」


 ……そんなテンプレな台詞と共に、一人の少女に絡んでいるチンピラ達を見かけた。

 通行人達は我関せずといった体で、少女を見て見ぬフリをして彼女の傍を通り過ぎて行く。


 俺も余計なトラブルに巻き込まれたくないと思って通り過ぎようとした……けど、その少女が教え子だったら話は別だ。


 チンピラ達の方に向かって歩いて行くと、その少女―ルルと視線が合う。


「あ〜……ちょっといいか?」

「ァアッ!?」


 俺の言葉に反応してチンピラ達が揃って振り向き、メンチを切ってくる。

 全く以て恐怖を感じない視線を受け止めつつ、彼らに言う。


「俺はその娘と待ち合わせをしてたんだ。用がないなら今すぐ立ち去ってくれないか?」


 待ち合わせなんて端からしておらず、口からの出任せだ。

 だけどその真偽を窺い知ることのないチンピラ達は、俺にさらに眼を飛ばしてくる。


「オウオウ、俺達が先にこの女に話し掛けてたんだぞ?」

「ナニ邪魔してくれてんだ、オオウ?」

「痛ぇ目に遭いてぇのか、アアッ?」

「……さあ。行くぞ、ルル」


 絡んでくるチンピラ達の言葉を無視して、俺はルルに近付く。


「無視してんじゃねえぞ、コラァッ!!」


 チンピラの一人がとうとうキレて、俺の背後から襲い掛かってくる。

 なんとなくの気配で殴り掛かってくるのを察した俺は、姿勢を低くしてチンピラのパンチを避ける。


 そして半身になりながらそのチンピラの鳩尾に肘鉄を喰らわし、その衝撃で下を向いた顔に向かって肘を支点に裏拳を叩き込む。

 鼻っ柱に裏拳を喰らって鼻血を噴き出すチンピラに、追い撃ちとして股間を力一杯に蹴り上げる。


「ぐおおお……」


 そのチンピラは悶絶しながら、地面へと倒れ込んだ。

 仲間がやられ、他の二人がたじろいでいる。


「そっちの二人はどうした? 掛かって来ないのか?」

「……ぐっ!? クソッ! 覚えてやがれっ!」


 俺の安い挑発に乗ることなく、チンピラの片方が戦闘不能状態の仲間を抱き抱え、もう片方がそんな捨て台詞を吐く。

 そしてその三人は、俺の前から去って行った。


 ……『勇者』相手に捨て台詞を吐けるとか、ある意味怖い物知らずだよなぁ……。


 そんな心底どうでもいいことを思いながら、背後を振り返る。


「大丈夫だったか、ルル?」

「……!? あ……はい! 大丈夫ですっ」


 ルルはほんの少し頬を紅潮させながら、そう返事をする。


「それじゃあ俺はこれで。変な輩に絡まれないように気を付けろよ」

「あ……ま、待ってください、先生!」


 そう忠告して立ち去ろうとしたその時、ルルに呼び止められた。


「どうした?」

「あ、あの……わたしについてきてもらえませんか? またさっきみたいな人達に絡まれないとも限らないので……」

「……ああ、いいぞ」


 特にやることもなかったので、俺は肯定の返事を返す。


 そしてルルと共に、彼女が行きたかった場所に同行することになった―――。






これはルルとデー……ゲフンゲフン。




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