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黒魔女裁判から始まる白魔女とのオフホワイトな日常  作者: 旧プランクトン改めベントス
第1戦:健康でサブカル的な最低限度の(子供らしい)生活
19/19

16.昨夜はお楽しみでしたね▼

視点は第3者のままですが、主人公(ボケ倒す役)は変わります。

でも話はそのまま連続です。


本文:ヤマト

あとがき:レス



 悪魔・レス:「ん…」

 悪魔ははっとして目を開けました。


 ヤマト:「どうしよう…」

 悪魔・レス:「?」

 上から降ってきた声に悪魔がぼんやりと目を上の方に向けると、そこには魔女がいました。

 悪魔・レス:「ヤマト?」


 ヤマト:「悪魔と同衾しちゃった…」

 悪魔・レス:「はいっ?!」


 悪魔はずきずきと痛む頭で考えを整理し始めました。


 悪魔・レス:「ええと…私、ヤマトを寝かしつけるつもりが、そのまま眠ってしまったの、か、な~?」

 ヤマト:「多分そうですね。」


 悪魔・レス:「そ、そっかぁ…ショウ坊達はどっか行っちゃったのかな。今、時間は…」

 悪魔は懐中時計を確認しました。

 悪魔・レス:「…出勤まであと3時間か。」


 悪魔は立ち上がりました。すると、テーブルにメモが置かれています。力強い達筆から、悪魔はそれが鬼の物だとすぐに分かりました。さすが相方です。


 『時間になったら起こしに行く。もし先に起きたならそれまで適当に過ごしとけ。城内には周知済みなので同伴付きで出歩いてOKだ。』

 悪魔・レス:「了解…」


 ヤマト:「予想通りの猛々しい文字なんですね、ショウさんって。」

 悪魔・レス:「そうだね。仏教課にいただけあって字も上手いよ。習字はニュアンスが違うから教会には飾れないけど。」


 ヤマト:「ワビサビってやつですか。ニンジャ、ハラキリ、スシ、ゲイシャ…」

 悪魔・レス:「…ヤマトってどちらかというと私じゃなくてショウ坊寄りの文化圏の名前だよね?」

 あまりに他人事な反応に悪魔が疑問を持つと、魔女はうーんと考えた後にうなずきました。


 ヤマト:「私の名前をつけた人がショウさん寄りの文化圏出身だっただけで、私自身はレスさん寄りですよ。そっちの文化圏に知り合いはいますけど…基本的に私は教会で礼拝する文化だったので。」

 悪魔・レス:「あっ、ヤマトがいわゆる転生・転移者とかいう事情は無いんだね。何かそういう系統の名前って転生・転移者に多いんだよね。」


 ヤマト:「私は違います。ただ…」

 悪魔・レス:「ただ?」

 ヤマト:「…ブランシェ以外は別の世界から来たって聞いた事があります。」


 悪魔は一瞬思考が停止しました。


 悪魔・レス:「…何て?」


 ヤマト:「聖女以外の勇者・剣士・賢者は別の世界から」

 悪魔・レス:「転生・転移しちゃったの?!」

 ヤマト:「…転生です。」


 悪魔は声にならない叫びを上げながら座り込みました。

 ヤマト:「レスさん?!」


 悪魔・レス:「どうしよう、どうしよう…私、4キルとか魔王様の前で調子乗っちゃったんだけど。私の方が即キルされるよぉっ!」

 ヤマト:「レス、さん?」


 悪魔・レス:「や、ヤマトっ!私っ、あれだけ息巻いてたのに、ものすごく情けない姿を晒してしまうと思う…ごめんね。」

 ヤマト:「レスさん?!」

 魔女は慌てて悪魔を支えました。


 ヤマト:「そ、そんな簡単に倒されるわけが…あ。」

 魔女はそこまで言いかけて歴代勇者の記録を思い出しました。


 勇者一行は、道中であっても全滅する事もあるぐらい頻繁にリスポーンするものですが、たまに0死で魔王をあっさり倒す、いわゆる「無双する」タイプの勇者一行もいるのです。

 魔女は何らかの事情がありリスポーンの記録が残っていないせいだと思っていましたが、この悪魔のただならぬ様からするに事実かもしれないと感じ始めました。


 悪魔・レス:「あればかりは天災級だからどうにもならない。たいてい別の世界から来たパターンは、神様から特殊能力ギフトを与えられているんだ。私達って、神様の反乱因子…いわば神様にとって面白くない堕天使って存在から作られているじゃない?」

 ヤマト:「そうですね。」


 悪魔・レス:「普通は見守っているだけなんだけど、たまに神様が八つ当たりかストレス発散か分からないけど堕天使に嫌がらせするために私達が敵わないような能力や武器を与えるんだよ。」

 魔女は神が人に与える特殊能力の話なら聞いた事があったので、納得しました。


 ヤマト:「堕天使の傲慢さを反省させるために神との力の差を見せつけるっていう」

 悪魔・レス:「そう。あれはね、私達が束になっても勝てない相手なんだ。ヤマトがそういう能力を持っているなら、私はなおの事戦わせたくないと思ってた。私達が何度もいないみたいに即キルされて辛かったのを知っているから、勇者一行にそんな辛い思いはさせないと思ってたんだけど…まあ…逆で良かったよ、私達は慣れてるし。」

 悪魔は落ち着いたのか、立ち上がりました。


 ヤマト:「…。」

 悪魔・レス:「そうだヤマト、お腹空いてない?仕事まで時間があるから、着替えたらご飯に行こうか。付き添いがあれば外出て良いみたいだし。」

 ヤマト:「はい!」

 悪魔・レス:「良いお返事だね、じゃあ私はシャワー浴びてくるからゆっくり準備して待ってて。」

 ヤマト:「えっ!」


 悪魔は首を傾げました。

 悪魔・レス:「?ヤマトが部屋出たらすぐ分かるし、私が部屋にロックをかけておくから監視する必要は無いと思うよ、って、何をもじもじしてるの。」

 ヤマト:「だ、駄目ですよっ//そんな、精神的には大人とは言え幼気な少女とだなんて!」

 悪魔・レス:「何の話?!」


 ヤマト:「ご飯にしよう?お風呂に入るね?私、待ってて?って…やっぱり朝チュン展開の読みは当たっていた!」

 悪魔・レス:「朝というか…今は今日の6割が過ぎたあたりなんだけどね。」

 悪魔はもうツッコむのが疲れてきて、やっとそれだけ訂正しました。


 悪魔・レス:「ともかく、そんな事は無いから、ちゃんと着替えて…」

 ヤマト:「もう♡いけないんだからぁ…」

 悪魔・レス:「あっ今じゃない、私が出て行ってからっ!」

 目線を戻した瞬間にもう脱ぎかけていた魔女を慌てて止めます。


 ヤマト:「もしかしてレスさんは脱がしたい派ですか?私、大半の男性はちゃっちゃと全裸になってもらった方が良いって聞いた事があるので」

 悪魔・レス:「その情報ソースどこ?!保護者として有害図書にはクレームをつけるよ!」


 ヤマト:「『魔族から異類婚を申し込まれたら」

 悪魔・レス:「『ギルティ』ね!数時間前にその存在を初めて知った、忌々しき同人誌ね!」

 ※「1.魔王様とご挨拶」の本文・第2部後半


 ヤマト:「1度で覚えてくれるだなんて、やっぱりレスさん…真剣に私との事」

 悪魔・レス:「タイトルから強烈過ぎて覚えるよ、あんなの!」




 悪魔・レス:「ヤマト…お願いだから、健全な思考をしよう?」

 悪魔が言うと、魔女はうなずいて離れました。

 悪魔・レス:「(ある程度相手されて気が済んだら大人しく引いてくれるのかな。)」

 ※大きな誤解。


 いそいそと引き出しを開けて服を物色し始める魔女を見て、悪魔はホッとして自室に帰りました。



 ☆ロード中…☆



 自室に戻った悪魔は、置手紙の他に幹部から何か連絡が回ってきていないか携帯電話を取り出しました。ス魔ホとかいうやつです。


 悪魔・レス:「…あれ、電話の通知来てる。珍しいな。」

 普段は無料で電話を掛けられるアプリから掛けられるので、電話番号からまっすぐ掛けられる事はめったに無いのです。悪魔は思いつく心当たりが無いので番号を確認せずに消そうとしました。


 その時、電話が鳴りました。

 悪魔・レス:「うわっ!」

 思わず声を上げると、1テンポ後れて電話は切れました。


 悪魔・レス:「間違い電話…?」


 番号を確認すると、通知が来ていた物と同じ番号からでした。しかも…。

 悪魔・レス:「何、この番号…」

 そこには数字だけではなく、*や@、その他文字化けしたような記号が並んでいました。そこで思い出しました。


 悪魔・レス:「何か私、呪いかかった?」

 ここでバグやコンピュータウイルスが先に思い当たらないのも仕方ありません、悪魔は高齢者です。仮にそのような結論を導き出した所で、彼に成す術はありません。


 しかし仕事で厄やデバフを解除して長い彼は、ほとんどの呪いを解くだけの技術と知恵があります。だから、たまに手ごわいものがきても落ち着いて自分の身体で一旦背負ってからゆっくり解くのです。今回も気楽に構えて、いつも通りに自分の身体の状態異常を確認します。


 しかし、どこも異常はありませんでした。


 悪魔・レス:「じゃあ…何かのウイルス?」

 その瞬間、どっと額から変な汗が噴き出ました。


 悪魔・レス:「しょ、ショウぼー!!」

 悪魔族、特に彼が属する原種悪魔という種族は魔力量の多さ・寿命の長さ故の知識量を誇りプライドが高く、他の種族を見下す傾向すらあります。しかし、この悪魔の場合は「老いては子に従え」という言葉に非常に忠実です。

 特に、IT機器に関してはおんぶに抱っこという表現がばっちり合っています。


 悪魔は機種変更する度に相方の鬼に引き継ぎから設定までほぼやってもらう無料通話アプリから電話を掛けました。普通、ウイルス感染が疑われる際には画面を見られている可能性もあるため、とりあえず通信や電源そのものを一度切ってから何か操作をするよう暗黒領域では言われているのですが、悪魔はそんな事など知りません。


 鬼はなかなか出てくれません。

 悪魔・レス:「も、もう!知らないよ!私、何もしてないんだから!」

 悪魔はス魔ホをベッドに投げ、シャワーを浴びに行きました。


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