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黒魔女裁判から始まる白魔女とのオフホワイトな日常  作者: 旧プランクトン改めベントス
第1戦:健康でサブカル的な最低限度の(子供らしい)生活
14/19

12.闇契約に夢中になっていた悪魔は、背後から近づいてくる仲間に気付かなかった▼


 浴室を出て4人はリビングに入ります。そこそこの広さです。


 ヤマト:「人質にしてはかなり良い部屋ですね!」

 魔王・インペリアル:「まあな。万一の際に、レスとショウ坊がお前をここで長時間監視できるような広さを考慮している。」


 悪魔・レス:「なるほど、だからテーブルには椅子が3つ…」

 ヤマト:「(1番大きい椅子は脚が短くてがっしりしていて、中ぐらいの椅子は背もたれと座る場所に穴が空いていて、小さな椅子は脚が長い…)」

 それぞれ大きさと形状が異なっているのを見て、魔女は「魔王城って本当に多様性の社会だな」と思いました。


 魔王・インペリアル:「人間は女でも成長する奴はでかくなると聞く。だからベッドは大きめの物を用意しておいた。」

 魔王がベッドを指します。ふかふかのダブルベッドです。


 ヤマト:「きっと、これは…」

 「これは?」

 魔王たちが固唾を飲んで次の言葉を待ちます。


 ヤマト:「…朝チュン展開を迎えるためのダブルベッドですね?!」

 悪魔・レス:「えっ…えっ、何て?!」


 ヤマト:「私が大きくなったら、お隣にすっごいイケメンの悪魔が半裸で『お前の魂、貰ったから』ってキメ顔で言ってくれるんでしょう?」

 悪魔・レス:「何でそういう夢見るかなぁっ?!」


 ヤマト:「だって普通、理不尽な理由とか向こうの実力見誤りで追放された場合って、そういう意味でも美味しい展開があるじゃないですか!私は弱体化する代わりにリスポーンという能力に目覚め、魔王軍幹部(人質)という肩書を手に入れました!あとは美形のお兄様に溺愛されるだけなんですよおおっ!」


 鬼・ショウ坊:「…あのな、その手の主人公は溺愛とか(逆)ハーレム展開を通じて心を開いていくもんだ。お前は邪念があり過ぎるからそう簡単にはいかんぞ。」

 魔王・インペリアル:「爪を隠すタイプの鷹は、そういう算段など無いのだ。」


 魔王の言葉に魔女は不敵に笑います。

 ヤマト:「じゃあ私が新しいルートを切り開きます!悪魔を呼び寄せ、あっ君のデバフが効かない身体で!」


 鬼・ショウ坊:「あのな、お前に寄って来る奴で逆ハーレムが出来たとしても、それは好意によるものじゃなくて殺意と食欲と汚い性欲で出来たものだからな?」

 悪魔・レス:「危ないでしょっ、私達は許さないよっ!」

 魔王:「…アホか。」

 軽くパニックを起こす悪魔の横で、魔王はため息をつきます。


 魔王:「大体、お前の言うような美形…つまり人型をとれる程のまともな悪魔はそんな残業などしない。魂だけ貰ってさっさと仕事を終える。」

 ヤマト:「そんなぁ!営業だったらアフターケアまで粘ってくださいよ!」


 魔王:「粘るも何も、契約が破れない以上、契約した人間は放っておいて構わんだろう?」

 ヤマト:「このっ…悪魔!」

 魔王:「悪魔だ。」

 ヤマト:「…そっか。」

 魔王:「まったく、小娘はうるさくて敵わん。我輩の役目はここまでだ、後はお前達に任せる。」

 魔王は部屋を去って行きました。



 ヤマト:「むぅ…」

 鬼・ショウ坊:「馬鹿め。」


 悪魔・レス:「勇者一行の事は知らない。黒魔女狩りの事も。だけどもう私達はヤマトの有能さを買っている。それで良いじゃない。これ以上を望む事がある?」

 悪魔は魔女を諭そうと試みます。


 ヤマト:「…テンプレが叩かれる台詞、『えっ私、またヤっちゃいました?』っていう」

 悪魔・レス:「吹き出しの表記に悪意があり過ぎる!」

 鬼・ショウ坊:「第一、そっちの方面で無自覚なのはただのクズだろが。まだ無自覚に能力暴走させてる方が倫理的ではあるというか。」


 ヤマト:「『また』っていうのがミソなんですよ。」

 鬼・ショウ坊:「ドクズじゃねぇか!」


 ヤマト:「『勇者一行から黒魔女の濡れ衣を着せられた体育会系白魔女は一足先に魔王城を(恋愛的な意味で)攻略する~処刑失敗したから戻って来いと言われたがもう遅い、こっちは魔界で総受け状態なので~』」

 悪魔・レス:「…。」


 鬼・ショウ坊:「はー…まったくお前というやつは。レス、本当にこいつの相手は…?」

 悪魔の方を見た鬼と魔女はそれまでの顔を一変させました。

 柔和な笑みを崩さず眉と目元だけでほとんどの表情を作っていた悪魔の顔から笑みが消えていました。


 悪魔・レス:「…ヤマト。」

 ヤマト:「は、はいっ!」

 悪魔は無表情で魔女を抱き上げました。


 ヤマト:「あ、あの…?」

 いきなりの事に戸惑う魔女に目だけで微笑んだ直後、悪魔は魔女をベッドに放り投げました。くわぁぁんとちょっと綺麗なスプリング音を立てて魔女の小さな体がベッドの上で軽く跳ねます。

 鬼・ショウ坊:「は?!レス?!」


 悪魔・レス:「ショウ坊、足押さえてて。」

 鬼・ショウ坊:「え…?」

 鬼は戸惑いながらも魔女の脚を押さえました。悪魔は魔女の上にまたがり、ベッドに膝を着きました。


 悪魔・レス:「ヤマト、私とショウ坊が君を襲った異端審問官だと思って抵抗してごらん。」

 ヤマト:「え?」

 悪魔・レス:「本気になれないか~…ん~、だったら…」


 悪魔は魔女の首元に手をかけ、力を入れました。

 鬼・ショウ坊:「お、おい?!死ぬぞ!」

 悪魔・レス:「そうだねぇ、ヤマトが抵抗しなかったら死んじゃうね。」

 鬼・ショウ坊:「(そうか、ヤマトに魔の恐ろしさと危機感を教えるために!)」

 鬼は悪魔の意図にやっと気づきました。


 ヤマト:「…。」

 悪魔・レス:「…どうして抵抗しないの?死ぬよ。」

 ヤマト:「…。」

 魔女は嬉しそうに口角を上げて、目を閉じました。


 悪魔・レス:「ヤマト!」

 悪魔は首をつかんだまま揺らします。

 鬼・ショウ坊:「いやレス、まだ死んでない」

 悪魔・レス:「知ってるよ!だけど心は死んでるつもりだ!」


 ヤマト:「弱体化した私に抵抗する術なんて無いから、挑発する時点で覚悟は出来ていますよ。」

 魔女は安らかに目を閉じたまま答えました。

 悪魔・レス:「いやそこは怖がるところ!私達、魔って恐ろしいんだよ、そういう事簡単に言っちゃいけないよってせっかく教えているのに!」


 ヤマト:「闇契約が出来なかったとしても、レスさんっていうちゃんとした悪魔の男性に優しくしてもらえたんだからとりあえず今回はこの辺で人生終わらせて、次の輪廻で闇契約をしようと」

 悪魔・レス:「残機無限が悪用されてる?!」


 魔女は目を閉じたままです。

 ヤマト:「あれですよね、お姫様って王子様のキスで目覚ますんですよね。じゃあ黒魔女は悪魔の蘇生で目を覚ます事にします。」


 鬼・ショウ坊:「そこはキスじゃない」

 悪魔・レス:「余計な事言わなくて良いから!」

 悪魔は振り返って鬼に口止めします。


 ヤマト:「…レスさんだって悪魔なんですから、嫌だって言いながらどうせ誰にだってやってるんでしょう?」

 悪魔・レス:「やってないよ!私は営業職じゃない!」


 魔女はハッとしました。

 ヤマト:「じゃあ、レスさんは…」

 悪魔・レス:「私は?」


 ヤマト:「営業すらしないという時点で、人間とは」

 悪魔・レス:「言っておくけど私は聖職者だよ?っていうか今更?!」

 「容姿の持ち腐れだ」と魔女は思いました。


 ヤマト:「レスさんと契約したいです。」

 鬼・ショウ坊:「またそれか。」

 悪魔・レス:「ダメだよ、私は出来ないの。」


 ヤマト:「うう…じゃあ、シジルください。」

 シジルというのは、悪魔1体1体に定められた紋章で、第二の名前のようなものです。人間は、呼び出したい悪魔のシジルを描いて定められた手順通りに儀式を行うとその場に正しい悪魔を召喚できます。


 悪魔・レス:「君、何する気?!」

 シジルは悪魔にとってプライバシーの最骨頂で、一種の物好きを除き大半の悪魔は信頼する相手にすら見せません。

 ヤマト:「お部屋に飾って、悲しい時と暇な時にレスさんを呼び出そうと思って。」

 鬼・ショウ坊:「構ってちゃんかよ!」


 いくら悪魔だって、その度に召喚されては敵いません。

 悪魔・レス:「魔界電話で解決してくれないかな?!」

 鬼・ショウ坊:「それも譲歩しすぎだろ!」


 魔界電話とは、魔界の圏内であれば離れた相手とそれを介してリアルタイムで話す事の出来るハイテクな魔界限定の通信手段です。人魔戦争においてまだ勇者VS魔王という代表戦争方式が採用されていなかった時代、魔王城と前線兵が連絡を取り合うために発明された物が一般に普及したのです。


 ヤマト:「人間界の電話しか持ってないです。それも捕縛の際に没収されました。」

 人間界でも同様の物が同様の理由で発明されていました。しかし、メカニズムは魔界の物と少し違うようで、魔界電話と人間界の電話では通信出来ません。

 悪魔・レス:「えっ…あ、そっか。そうだよね、うん…」


 悪魔はしばらく考え、彼の中で何度も至って破棄した案を実行するしかないと結論付けました。

 悪魔・レス:「…魔界電話、買おうか。」

 悪魔教会の1月の出費がこれから電話1台分の通信費も増えるのだと悪魔は薄目になりました。


 人魚・イブキ:「いや、既にカロル君が用意してるみたいだから必要無いよ…って、何してるの?!」


 はっとして振り返ると、いつの間にか入って来ていた人魚と吸血鬼が目をまんまるにしていました。


 鬼・ショウ坊:「いや、あの、これには事情が」

 吸血鬼・イターシャ:「最っ低!強姦魔!性職者!」


 人魚と吸血鬼が、それまで持っていた紙袋を床に置いてそれぞれ手の内に魔力を凝縮させるのを見て鬼はベッドから床に伏せました。

 鬼・ショウ坊:「まずい、レス、伏せろ!」


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