キダルくんのさがしもの
けいちゃんの街に雪が積もりました。
けいちゃんはおおよろこびで雪だるまを作りました。
ころんころん、大きな玉を二つ作って、お目目と鼻と口をつけました。
そうすると、雪だるまがけいちゃんにニッコリ笑いかけました。
「こんにちは! ぼくはキダルだよ」
「こんにちは、ぼくはけいちゃんだよ。キダルくんっていうの」
「そうだよ。ぼく、さがしものをしてるんだ」
「なにをさがしているの?」
「それが、なにをさがしているのか忘れちゃったんだ」
キダルくんは悲しそうに言いました。
けいちゃんはかわいそうになりました。
「じゃあ、探すの手伝ってあげる」
けいちゃんは、キダルくんのさがしものを手伝うことにしました。
「うーん、キダルくんは何をさがしていたのかなあ。おにぎりかな」
けいちゃんは、小さな手袋をきゅっとはめなおすと、雪を集めておにぎりを作りました。
「はい、どうぞ」
「わあ、おにぎりだ。うーん、美味しそう」
キダルくんはよろこんで、ぱくぱくおにぎりを食べました。
「でも、さがしているものじゃない気がするよ」
そこで、けいちゃんは、小さなくるまを作りました。
くるまをはしらせるどうろも作ってあげました。
「はい、どうぞ」
「わあ、かっこいい。楽しそう」
キダルくんは目をキラキラさせました。
「でも、さがしているものじゃない気がするよ」
そこで、けいちゃんは、靴を作りました。
けいちゃんの好きな、雨の日でもぬれない、ピカピカの長靴です。
「わあ、面白い。やってみたい」
キダルくんは頭をゆさゆさゆらしました。
「でも、さがしているものじゃない気がするよ」
そこで、けいちゃんは、おうちを作ろうとしました。
けれど、ドアを作ろうと雪を集めはじめたところで、キダルくんがとめました。
「けいちゃん、ありがとう。でも、さがしているのはもっとちがう気がするんだ」
けいちゃんは、こまってしまいました。
「うーん、キダルくんがさがしているのはなんだろう」
けいちゃんはキダルくんのお顔を見つめました。
雪の玉に穴があいちゃうくらい、じいっと見つめて考えました。
すると、キダルくんがニッコリ笑いました。
「けいちゃんを見ていたら、なにをさがしていたか思い出したよ」
「えっ? なに? なに?」
「それはね……」
キダルくんはけいちゃんだけに聞こえる声で言いました。
おうちにかえったけいちゃんは、お部屋に飛び込んでさけびました。
「パパ、ママ、あのね! キダルくんはお兄ちゃんをさがしてたんだって!」
パパとママはふしぎそうに顔を見合わせました。
「キダルくん、すてきなお兄ちゃんをさがしにきたんだって。けいちゃん、お兄ちゃんになってあげるの」
「けいちゃん、どうしてわかったの?」
ママがそっとおなかをおさえました。
「そうよ、けいちゃん。あなた、もうすぐお兄ちゃんになるの」
けいちゃんはママの足にきゅっと抱きつきました。
まどの外にはまた雪がふりはじめて
キダルくんもまたすこし 大きくなったようでした。
おしまい