人生、上手くいくかどうかは、結局自分次第だよって、先輩が言ってたよ
タイトルとサブタイトルは、ストーリーと関係ないことがありますが、ご了承下さい。
日本、千葉県、良くも悪くも、発展を繰り返して、住宅街、そしてビル街が立ち並ぶ。
そんな中、江戸川沿いの、とある町。
ポツリと、わざと開発されない森が残されていた。
道を挟んだ向かい側には、広い芝生の公園がある。
遊具はあまりないが、かろうじて置かれているブランコに、一人の男が座っている。
夜に近づく夕方。
子供たちは、既に、それぞれの自宅に帰ってしまっている。
ちょうど20年ぶりに来た、その男は、昔のことを思い出していた。
20年前。
ここで出会い、よく遊んだ少女のことを。
自分が6歳の頃、親も、友達も、あまり自分のことを相手にしてくれなくて、一人でこの公園に来ていた。
公園までは歩いてすぐの距離に家があったので、この公園であれば、一人で行くことを許されていた。
当時、ブランコは怖くて乗れなかった。
揺れることもそうだけど、浮かんで、そのまま遠くまで飛んでいってしまいそうな感覚が、妙に嫌だった。
そして、あの何とも言えないな緊張感が、自分の秘密をバラしてしまうのではないかという気がして、どうしても乗る気になれなかったのだ。
真っ黒くて硬い髪。
元気印というように、いつもツンツンしていた。
それから、笑うとよく見える犬歯も、チャームポイントになっていた。
この公園に来る理由は1つだった。
日本では珍しい、栗色の髪の乙女を見るためだ。
肩まで伸びた髪は、サラサラと風になびき、心なしかいつも良い匂いがした。
初めて会ったのは、そう、お母さんと喧嘩した日だった。
喧嘩した理由は覚えていないけど、些細なことだったことは間違いない。
僕は、ブランコに座って、大泣きしていた。
どう、、したの?
彼女はおそるおそるという感じで、僕に話しかけた。
僕は、その声に驚き、ビクリと身体を震わせた。
涙は止まり、自分もおそるおそるというように顔をあげ、彼女の顔をのぞいた。
僕が黙っていると、彼女がまた口を開いた。
大丈夫?
僕は静かに首を振った。
彼女は、ゆっくりと僕の隣のブランコに座り、今度は僕を見ずにまっすぐ前を向いた。
大丈夫!
今度は、僕にというよりも、誰かに言い聞かせるように、まっすぐ前を向いて、彼女は叫んだ。
大丈夫!
大丈夫!!
彼女は、何回か、そう叫んだ。
僕は、その横顔に、いつしか見とれていた。
強い子だな。
って思った。
彼女は、ふと、こちらを向いてきた。
目と目がバチリと合う。
僕は恥ずかしくなって、目を逸らしたかったけど、いきなりのことにテンパって、逸らすことが出来なかった。
そして彼女はニッコリと笑った。
僕も、少しだけ笑った。
もらい笑顔だった。
彼女は未だ笑って、僕に話しかけてきた。
僕、ココロ。君は?
ーーー僕は、ショータ。
何で泣いてるの?
ーーーもう泣いてない。
僕は、嫌なところを見られたことに今になって気付いて、思わず見栄を張った。
なんかあった?
ーーーお母さんと喧嘩した。
なーんだ、そんなことか。
そんなこと。
そう言われて、自分でも何で泣いてたのか、なんて思って、なんだか不思議な気持ちになった。
「ココロは、なんでここにいるの?」
他の子たちはもう帰ってる時間に、公園にいて、しかも、泣いていた僕なんかに声をかけてくるなんて、どうしてだろうと、疑問に思って聞いてみた。
「家が、近いから。」
答えになってるような、なっていないような。そんな気がしたが、僕は納得した。
彼女の声には、人を安心させるような、心地よさがあった。
さらに彼女は続ける。
家に、帰らないの?
ーーーまだ、帰りたくない。
じゃあ、僕と遊ぶ?
僕は、大きく頷いた。
彼女と遊んでいたら、嫌なことも忘れられるような気がしたから。
そして、それは現実になった。
手を繋いでぐるぐる回ったり。
どっちが高くジャンプできるか競ったり。
手の大きさを比べたり。
森に向かって大きな声で叫んだり。
そしたら、なんだか笑えた。
芝生の上に、二人で、仰向けになって転がって、ゲラゲラ笑った。
楽しい!
って、心から思った。
とうとう心配になったお母さんが、公園にやってきた。
お母さんは、馬鹿笑いしている僕を見て、またしてもひどく怒ったらしい。
顔を真っ赤にして、ガミガミ言っている。
でも、僕は、今度は言い返そうとは思わなかった。
そんなことよりも、今は、楽しかった。
心が、はしゃいでいたから、母親からの説教は、全く聞こえなかった。
お母さんは、ココロにも、早く帰るように言っていた。その声は優しかった。
僕は、ココロとまた会いたかった。
また一緒に遊びたいと思った。
「ココロ、また会いたい。」
ーーーうん。また、遊ぼ。
そして、僕たちは、別れた。
森の方に、ちょっと歩いたところで、僕は名残惜しく、振り返った。
そこにはもう、ココロの姿はなかった。
それでも、僕は、さっき森に叫んだように、大きな声で叫んでいた。
ココローーーバイバーーーイ!!
誰もいない、ブランコが少し揺れる公園に向かって。
そして、お母さんに引っ張られて、また歩き出す。
ショーターーバイバーーーイ!!
背中の方から、もう小さくなった声が聞こえた。
僕は嬉しくなって、また振り返った。
もう公園も見えなくなっている。
それでも僕は、また叫んでいた。
また明日ねーーー!!
ーーーまた明日ねーー
その声はこだまのように返ってきた。
今度こそ、強くしっかりと、お母さんに引っ張られて、その場を後にした。
黒いシッポのアクセサリーが、ピョコンとはねた。
。




