失恋2日目
クラスに近づくにつれてどんどん気分が暗くなっていく
周りの生徒達は新学年という事もあって賑やかだ。
「はぁ・・・」
新学期始まって早々、こんな重たい溜め息を吐くのは
私だけだろう・・・
そしてとうとう自分のクラスの前に着いてしまった。
ドアを開けようか、開けないか迷っていると
「邪魔」
と多分クラスメイトだと思う男子に言われた。
「ご、ごめんなさい・・・」
私はいつもの癖で謝ってしまう。
私は自分が悪かろうと悪くなくても謝ってしまう癖が
あり、よく広樹には注意された。
そしてその男子がドアを開けると広樹が彼女である
三浦亜紀と仲良く話をしている光景が見えた。
「・・・ッ‼︎」
私はその光景を視界に入れたくなくて
前髪をわざと目のところにおろして自分の席に向かった。
自分の席に着くと、すぐに机に突っ伏した。
(分かっていたけど・・・実際に見ると辛い・・・)
それは広樹が彼女と仲良く話をしている場面だ。
いつかは来ると思っていたが、まさか目の前で
見る日がこんなにも早く来るとは・・・
(授業中、ずっとこうしてようかな・・・)
よりによって私の席は広樹よりも後ろのため
授業中はどうしても視界に入ってしまう。
(どうせ今日はテスト無いし・・・予習で勉強したし
全部の授業寝てよう)
そう思い、私は突っ伏したまんま寝ることにした。
「・・・さん」
「ぐぅ・・・」
「・・ちさん‼︎」
「ぐぅ・・・まだ寝たいよ・・・」
「樋口さん‼︎」
「は、はい⁉︎す、すみません‼︎」
私は飛び上がった。
周りを見るとどうやら現代文の授業だった。
「あ、あれ・・・」
「樋口さん、貴方今まで寝てたんですよ」
「あ・・・」
そういえば今日は授業寝るって決めてたんだ・・・
「優等生の貴方が寝るなんて・・・夜更かしですか?」
「い、いえ・・・すみません・・・」
流石に言えない。
広樹を見たくないから寝てたとは言えない。
クラスメイト達は私を見て、笑っていた。
「じゃあ樋口さん、次の箇所読んで」
「え、えっと・・・どこですか・・・?」
そりゃそうだ、予習はしてきたが現在授業で
どこを読んでいるか何て分かるはずがない。
私の頭が混乱し始めた時・・・
「ーー先生、代わりに俺読みます」
広樹が何故か立候補した。
「あら澁澤君、貴方が自ら手をあげるなんて
どういう風の吹きまわし?」
「俺、今すごく読みたい気分なんですよ〜
どうかお願いしますよ〜」
「その積極性がテストの点数に出てくれると
嬉しいのですが・・・」
広樹は文系科目が本当に苦手だった。
特に国語なんて毎回赤点ギリギリだ。
「それは誠に申し訳ありません・・・
次回のテストでは平均点を超えてみます・・・」
と言うとクラスの中が笑いに包まれた。
まさか広樹、私をかばってわざわざ・・・?
「じゃあ澁澤君、読んでください」
「分かりました‼︎え〜と・・・
すみません、これって何て読むんですか?」
「・・・澁澤君、後で職員室に来なさい」
「ちょ、先生⁉︎酷いっす⁉︎」
・・・うん、広樹って変に抜けているよね。
でもそれがカッコ良かった。
私にとって広樹は正義のヒーローだった。
と思っていると不意にスマホがメッセージを受信した。
宛先を見ると広樹だった。
(どうしたんだろ?)
と内容を見てみると
ーー
大丈夫、心配すんな。
俺がいる限り助けてやるからさ
ーー
「・・・ッ⁉︎」
私は一気に顔が赤くなるのを感じた。
(広樹、これは卑怯だよ・・・)
「あれ、樋口さん、体調大丈夫?」
「あっ、いえ⁉︎だ、だ、大丈夫です‼︎は、はい‼︎」
「・・・辛かったら保健室行ってもいいよ?」
先生に風邪と勘違いされて心配されてしまった。
(広樹の・・・バカ)
この時ばかりは私の幼馴染を恨んだ。
例のクズが登場するまで後数話・・・




