最後にしよう
今日は続けて投稿します。
「意味は無いけれど〜ただ歩く〜
そこに〜道があるからなのさ〜」
私は国木田をホテルに置いてきた後、家の近所を
変な自作の歌を歌いながら歩いていた。
目的の人物には既に連絡済みだ。
ただその人物と会うまでには時間があるので
近所の道ーーつまり広樹との思い出のある道を歩いて
あの頃を思い出していた。
「いや〜懐かしいな〜この道は小学校からずっと広樹と
一緒に歩いていたな〜」
私は広樹がいた頃は行動が全て遅かった。
だから彼と一緒に歩いていて、よく置いてかれていた。
そしてその度に広樹が前で私が追いつくまで待ってくれた。
「あの時から広樹には迷惑かけてばっかりだったな……
にしてもよく私に合わせてくれていたな〜」
私ならこんなトロイ女子は即効で見捨てるが
広樹は最後まで私に付き合ってくれた。
……本音を言うと何で私を見捨てなかったのか
広樹の事を大半知っている私でも未だに分からない。
「とりあえず広樹が聖人だってことは分かったね!!
いや〜私の幼馴染凄いわ〜!!」
しばらく歩いているととある公園が見えてきた。
「あっ、ここはよく広樹と遊んでいた公園だ〜
うわ〜懐かしいわ〜」
私は外で遊ぶのが苦手で部屋でずっと本を読んでいる
ような子供だった。
だけど広樹に誘われた時は例外的に外で遊んでいた。
……まぁ遊ぶといっても2人で一緒に砂場で
山や城もどきを作ったりしていたが。
「広樹……出来た……」
「えっ……本当? ってすご!?
どうやってそんな綺麗な山作れるの?」
「ここと……ここを……同じ角度に……合わせて……
ここと……ここは……15度の差を……つけて……」
「……ごめん、翔子。わからない」
「えっ……ダメ?」
「うん、俺がバカなのもあるが難しい」
「……残念」
「うん広樹、今ならその言葉の意味がわかるよ。
ーー普通砂場の山作りに角度の計算いらない」
昔から私は勉強はできたが、結構変わっていた。
「というか昔の私の話す相手って広樹と家族が
9割以上なんだよね……」
多分他の人の割合は1割の半分も満たしてないだろう。
だがどうしても他の人と話さなければならない
イベントが発生する。
ーーそれは修学旅行やあ遠足という集団行動だ。
人と話すのが苦手な私にとっては地獄でしない様に
見えるが実は……
「といっても毎回広樹と同じ班なんだよね〜
いや〜本当に助かった〜」
修学旅行や遠足はいつも広樹と一緒だった。
まぁそもそもクラスが小学校から高校までずっと
同じという私の一生の運を使い切ったのでは?
と思うぐらいの奇跡が起こっていた。
そして班行動の時は決まって、広樹とその親友である宮沢が
同じ班になっていた。
……まぁ同じ班の女子が誰であったかは覚えてない。
正直班員が誰であろうとも私には広樹しか
見えていないからかもしれないが。
「いや〜楽しかったな〜あの頃は〜毎日広樹が隣にいて
それだけで私は幸せだったし、それで充分だった」
広樹との思い出の道を歩きながら
彼との思い出を振り返る。
殆どが楽しい思い出だ。唯一嫌な思い出が
広樹が何も言わずに私の前からいなくなったぐらいだ。
「私は広樹がいれば……貴方さえいれば……
それだけでよかった。本当に良かった」
ーー今では叶うことが不可能なこの思い
ーー今更口に出して叶う訳ではない
ーーただどうしても口に出してみたくなった
ーーそこに明確な根拠や理由がある訳ではない
ーー本当にただ口から出して見たかっただけだ
そんな事をしていると気がついたら目の前は既に
目的地となっていた。
「ありゃりゃ、もうついちゃったか……
せめてもう少し思い出に浸りたかったな〜」
ーーもうこれで国木田達とも会わない
ーーもう広樹とも会わないし会えない
ーーもう最後にしよう全てを
「さっ、行こうか私」
私はその建物の中に入っていった。
次回、全ての黒幕が明らかに




