あの野郎
同窓会が始まってから私の周りには人だかりが
絶えなかった。
「彼氏いるの?」
「学部は何?」
「都会の知り合い教えて」
とか、似たり寄ったりの質問ばかりがきた。
途中飽き飽きしながらも答えていた。
国木田はというと……
「お客様にはこちらがお似合いと思われますが
いかがしますか?」
と普通に接客していた。
国木田自体、バーテンダーの服装が意外と合っているため
将来、そういう職場にいてもおかしくない。
(というか似合い過ぎでしょ〜)
また同期をからかうネタが増えた瞬間だった。
そんな感じに同期を見ていると
「ちなみに翔子ちゃんって澁澤っていう男
覚えている?」
まさかこの場で、広樹の名前が出てきた。
「うん? 覚えているけど……」
(忘れたことあるわけがないだろ!!)
私は心の中で怒りながらもその男子の話に耳を
傾ける事にした。
「あいつ、今何してるんだろうな〜」
「さぁ? 分からないね〜」
すると他の男子が近くにやってきた。
「確か、あいつ高校退学になったんだよな〜!!
彼女に暴力を振るって、更にクラスメイトとも大喧嘩
したとかでさ!!」
「私もあの場にいたから知ってる〜!!1人で
キレてバカだよね〜!!」
「ハハハ……」
(こいつら、社会的に抹殺してやろうか……?)
私の大好きな人を彼の事情を知らずに好き勝手に
言われて怒らないはずがない。
「自分が悪いのに、暴れちゃってさ〜
あんな危険な奴、いない方がいいよね!!」
「ん? お前ら何の話しているんだ?」
更に他のクラスメイト達が集まってきた。
「お前ら、澁澤っていう男覚えているだろ?」
「そんなやついたっけ〜?」
「ほら、高校退学になって、家族で引っ越していった」
「あーあいつか!!」
「そんな奴いたわ〜」
「あいつがクラスメイトと喧嘩していた場面
俺も見たぜ? いや〜バカな奴だよな〜?」
「「ハハハーー!!」」
「……」
(うん、こいつら殺そう。 とことん追い詰めて
死ぬ方が楽って思わせるぐらいにしてやろう)
大して目の前にいるクズ共に思い出があるわけでは無いし
何よりも自分の大好きな人が好き勝手にあれこれ
言われているのが許せなかった。
私のスマホにはこのクズ共の秘密がそれぞれに
送られる様になっている。
あとは、私が番号を打ち込むだけでこの場は一気に
喧嘩になるだろう。
(よし、やろ)
私がスマホを取り出そうとした瞬間……
ガッシャン!!
「お客様、危ない!!」
女性の店員が何かにつまずいてしまい
お酒が入ったグラスが倒れた。
そして中の液体が私にかかった。
「あらら……」
「お客様、大変申し訳ありません!!」
とそこに来たのは、国木田だった。
「え、ええ大丈夫ですが……」
彼は私の耳元に近づけ
「樋口さん、落ち着け」
と囁いてきた。
「えっ?」
「怒りたいのは分かるけど、ダメだよ」
そしてクラスメイトの方を向いて
「皆さま大変申し訳ありませんでした。
引き続き楽しいひと時をお過ごしください」
と言うと、片付けを始めた。
(まさか国木田、貴方は……)
わざと転ばせた?
あの時、転んだ彼女に一番近かったのが国木田だ。
彼のことだ、さりげなくその様な動作をしていても
おかしくない。
(まさか私が変な事をしない様に……?)
わざと注目を浴びる様にして、クラスメイトの話題と
私が暴走しない様にしたのだろう。
(ありがとうね、私の同期)
今グラスの片付けをしている同期に向けて感謝した。




