私の世界
私の復讐が思いもよらぬ出来事で終わりを迎えた後の
私の高校生活は特に記載する事も無い。
ーー学校に行き、授業を受けて、テストで点数を出す。
ーー苦手だった運動もそれなりに鍛えた。
ーー学年問わず告白されるが全部断った。
ーー外面を良くして、周りから好かれる様にした。
普段通りの生活なのに、何か足りない、満ち足りない。
それは当然だ。
だって私にとっての世界ーー広樹がいないからだ。
私にすれば広樹がいれば、彼さえいればよかった。
例え広樹が他の女子と付き合おうとも、近くで見れたら
それだけで私は良かった。
それなのに……
私は学校のテストでは常に1位を取り続けて
都内の大学に学校推薦をもらった。
……なんか私に推薦を取られたくない女子が色々と
裏工作をしてきたが、全部私から見ればお見通しで
全て見破った後、倍以上の仕返しをした。
私が都内の大学を選んだ理由としては学歴の他に
広樹との思い出の地を離れたかったというのもあった。
毎日学校から家に帰る度に自分の家の隣を見てしまい
部屋に戻ると泣いてしまうからだ。
私の両親もそれを分かっていたのか、都内の大学に
進学する事を認めてくれた。
……まぁ父親は見るからに落ち込んでいたが。
そして私の高校生活はあの事件以降目立った事は起きず
無事と言っていいのか分からないが卒業を迎えた。
クラスメイト達は泣いていたが、私は泣かなかった。
いや、泣けなかったという方が正しいかもしれない。
この高校には対して良い思い出は無かったし
クラスメイトに限ってはもう会わなくても済むと思うと
気分がとても良かった。
卒業式の後の打ち上げには呼ばれたが参加しなかった。
まぁ代わりに私の両親が祝ってくれた。
けど、そこには一緒に祝って欲しい広樹はいなかった。
そして私が家を出る日
私の両親は電車に乗る駅まで見送りに来ていた。
……クラスメイトには旅立つ日は伝えていないので
誰も来ていない。
「翔子ちゃん、頑張ってね。
毎日夜に電話するのよ……?」
「うん、ありがとうねお母さん」
「うわーー!! 翔子ちゃんが都会に行っちゃうーー!!
私はこれから何を楽しみにすればいいんだぁー!!」
「お父さん……別に今生の別れでもあるまいし
そんなに泣かなくても……」
私の父親は大泣きだった。
というかこの調子なら私が結婚するなんて報告した日は
気絶するんじゃないのかな?
「もしも何かあったらすぐに連絡するんだぞ!?
いつでも戻ってきていいんだからね!?」
「うん、ありがとうお父さん」
と両親と話していると電車の時間が迫っていた。
「じゃあ……行ってくるね」
私はもう一度両親の方を向いた。
「頑張ってらっしゃい翔子ちゃん!!」
「何かあれば私を呼ぶんだぞ〜!!
ファイトだ翔子ちゃん〜!!」
と両親の応援を背に受けて、私は電車に乗り込んだ。
そして電車に乗り込み窓から景色を見ていた。
(ふぅ……これでしばらく悲しくはならないよね?
だって見なくて済むんだもん)
もう家の隣を見ることはしばらく無いだろう。
また枕を涙で濡らす事は無いだろう。
(これでいいだよね……? 私は間違って無いよね?
絶対、間違って無い……絶対……)
私はもう一度、生まれ故郷の景色を窓から見た。
もうしばらくは見ないで済む景色を頭の中に刻み
そして……
(さよなら、私の世界)
と心の中で思った。
次で樋口の過去編おしまいです。




