あの頃は幸せだったな〜
今回から樋口の過去編に入っていきます。
「あの頃は幸せだったな・・・」
さっき母からもらったメールを見て思った。
私にとってはあの頃が1番幸せだった。
私が高校まで住んでいたのはとある田舎だった。
生まれてから私はそこにずっと住んでいた。
私が3歳の時に広樹の家族が隣に引っ越して来るという
漫画やドラマでありきたりな展開が私達の始まりだった。
私は小さい頃はかなり大人しく、いつもオドオドしてた。
大学での私を知っている人が聞いたら驚くぐらいの
引っ込み思案、そして全ての行動が遅かった。
そのためあまり同級生と遊べなかった。
だから私が遊ぶ相手は広樹だけに近かった。
「・・・ま、まって・・・ひろき」
「いいよ、ゆっくりいこうよ」
広樹はそんな私のペースに合わしてくれた。
彼は昔から周りに気配りが出来る男子だった。
引っ込み思案でもっぱら本ばっかりを読んでいた
私を外に連れ出して色々な場所に案内してくれた。
ーー何気ない裏山
ーー秘密基地という名の洞窟
ーー景色が綺麗な木に登ったり
ーー雪が降ったら雪だるまを作ったり
私にとって何気ない日常も広樹といるだけで輝いていた。
既にこの頃から広樹が私にとっての世界になっていた。
人から見れば"ありきたり"だと言われそうだが
私にとっては広樹が全てであった。
多分この頃から広樹が好きだったのだろう。
まだ幼い私には"好き"という感情が分からなかった。
そして幼稚園、小学校と広樹と同じ学校に行き
中学校も同じ中学校に行った。
その頃になると男子は男子、女子は女子と一緒にいる様に
なるが私には一緒にいてくれる仲がいい同性はおらず
広樹といる以外は基本的に1人だった。
それを知ってから広樹は登下校は一緒で、よくお互いの
家に行き来していた。
「翔子〜これ分かる?」
「・・・ん?これ・・・?これなら、この公式を使う」
私は勉強だけは出来た。
・・・そりゃ1人でいれば勉強以外することが無かった
からという悲しい理由からだったが。
「あっ、本当だ。ありがとう翔子」
「・・・大丈夫、広樹にはいつも助けてもらってる」
「いや〜本当に助かるよ〜」
勉強を教えるという名目を得るため、
私は勉強を更に頑張った。
そのため成績は校内トップになった。
「樋口〜お前すごいな‼︎この成績なら県内トップの高校
間違い無いぞ‼︎」
沢山の先生が口々に言うが、私にとっては県内トップに
行くよりも、広樹の側にいることが最優先だった。
この頃になると広樹が好きということがはっきりと
分かったが、私は広樹の彼女では無くてもいいと
思っていた。
広樹には私よりも相応しい人がいると思っていたし
一緒にいてくれるだけで充分だった。
何よりも広樹が幸せであるならば私も幸せだと思った。
・・・ただ、この思いは後に自分の行動を後悔する
要因になる事を当時の私は知らなかった。
次回から樋口の高校時代に入っていきます




