表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界で

この小説は作者が完全に思いつくままに書いたものです。かなりグダグダ、意味不明、異世界での具体的な生活は省略、などがあります。それでもよければお付き合いください。それが苦手な方はブラウザバックを推奨します。





暗闇の中に刃物が鈍く光を放つ

その刃物が僕の体へと突き刺さった。

痛かっただろうか。いや分からない。ただ温かいものが自分の身体から出ていく感覚があった。

「あああ・・・」

後ろには彼女が立っていた。よかった、助かったんだ。

次第に目の前が暗くなる。そうか・・・僕は死ぬんだ。

意識が深く沈んでいく中で僕はこう思った。


そう・・・これでいいんだ

これが・・・世の中のためになるのだから



「ちょっと君」

文化祭が近づき準備に追われている時に呼ばれて後ろを振り返る。一人の生徒がそこに立っていた。

「文化祭の準備に必要な段ボールを運ぶのが遅い。どうして二回も取りにいくのよ」

「だって・・・一度に運べる量ではなかったし・・・」

「倉庫の裏の台車を使えばいい話でしょ?どうしてそれができないのよ」

いつもこうなる。自分のした行動がいつも裏目にでる。要領よく仕事したはずが、結局要領の悪い方法だったりする。

こんなことなら始めから他の人に任せればよかったのだ。そうすれば時間もかからず早く済んだのに。

「もう何もしないで。あなたが関わると迷惑だから」

そういうとその生徒はどっかへいってしまった。だったらはじめから頼むなよ、と心の中で呟いた。



文化祭の準備に追われる中、僕はある重大な失敗をしてしまった。劇で使う衣装を破ってしまったのだ。

もちろんわざとではない。衣装を運んでいる途中セットから出ていた釘の先に引っ掛けてしまったのだ。

さらに慌ててしまったため、服の裂け目は広がってしまった。

当然僕は非難の的にされた。さらには誰が僕に衣装を運ぶよう頼んだのか、という犯人捜しまで始まった。

収集がつかなくなり、もういっそすべて自分のせいにしてしまおうかと考えた時、一人の女生徒がそれを諫め仲裁してくれた。彼女は品行方正で真面目、きちんとした性格で周囲からは委員長と呼ばれていた。

彼女が仲裁してくれたおかげで少しは落ち着いた。結局は僕が直すことになったけど。

一人で直していると委員長が手伝ってくれた。彼女は優しいんだよなぁ。僕に気があるわけではないらしいけど。



その日、僕は夜遅くに家に帰った。

僕の両親は夜遅くまで働いていることが多く、家にいつもいない。まあ、例え相談したとしても「そんなことは知らん。自分の力でどうにかしろ」といわれるのがオチだが。

「お兄ちゃん、私の手紙をどこにもっていったのよ‼」

帰ってくるなり早々妹が怒鳴りつけてきた。なんだよ・・・お前の手紙なんて知らねーぞ。

「机の上に置いていたのに、どこにもないんだもん」

机の上・・・ああそれなら

「机の上ならこないだ片付けておいたけど」

「・・・は?」

「こないだ母さんに家の掃除を頼まれたときにお前の部屋にはいってな。その時に机の上が散らかっていたから片付けておいた」

「・・・じゃあ机の上にあったものは?」

「いらないとおもって処分しておいた・・・けど・・・」

その時、僕は初めて失敗に気が付いた。間違えて妹の大事なものを捨ててしまったのだ。

「どうしてくれるのよ‼大事な手紙だったのに‼転校した親友からの大事な手紙だったのに‼」

妹が激昂した。僕はどうしていいのかわからなかった。

「お兄ちゃんはほんと余計なことしかしないね‼この間だってそう‼ポケットにティッシュを入れたまま服を洗濯して‼大変なことになったじゃない‼」

妹の怒号はまだ収まらない。

「うちにいても迷惑するだけだから‼出てって‼」

そういうと妹は自分の部屋に引き上げてしまった。



「人の気持ちを汲み取って行動しなさい」

父が僕によく言った言葉だ。

僕は自分なりに人の気持ちを察し、行動してきたつもりだった。

結果はこのザマだ。

僕は人の役になんか立てない。

人の役に立てないのならゴミと同然。だったらいなくなってしまえばいい。

僕はこう考えるようになり、それがいつしか自殺願望へと変わっていった。

そして・・・思わぬ形でそれが叶ってしまうこととなる。



妹に家を追い出された僕は、行く当てもなくとりあえず近くのコンビニによった。

コンビニでは漫画雑誌が置いてあるが別に読む気が起こらず、コーヒーでも買おうかと考え外を見た。

すると、委員長が歩いているのが見えた。こんな暗がりでよく見えたものだな。

(こんな夜遅くまで、塾にでも行っていたのかな)

そう思い目を逸らそうとした瞬間、委員長の後ろから何者かがつけているのが見えた。

(あいつ・・・もしかして例のストーカーか?)

噂で聞いたことがある。委員長が誰かに付きまとわれていると。

怪しく思い後をつけてみることにした。

しばらくつけていると急に何者かが止まった。

「後をつけてきているようですが・・・いったいなんなのですか」

委員長が何者かに少し大きな声で話しかけると、彼は動きだした。すこしにやけているようだ。

少しの間二人は何か話していた。僕のいる場所までにはあいにく声が届かない。

すると男は突然ポケットから何か光るものを取り出した。それが折り畳みナイフであることに気が付いた。委員長の顔が強張る。

男がナイフを振りかざした。委員長はすんでのところで躱し僕のいる方へ逃げてきた。

彼女は必死に逃げていたが男の足の方が速いらしい。すぐにも追いつかれそうだった。

僕は彼女を助けるべきか迷った。その時不意に自分が持っていた願望のようなものが動いたらしい。

僕は彼女と男の間に割って入るように立ちふさがった。

暗闇の中にナイフが鈍く光を放つ

その刃が僕の体へと突き刺さった。

痛かっただろうか。いや分からない。ただ温かいものが自分の身体から出ていく感覚があった。

「あああ・・・」

後ろには彼女が立っていた。よかった、助かったんだ。

次第に目の前が暗くなる。そうか・・・僕は死ぬんだ。

意識が深く沈んでいく中で僕はこう思った。


そう・・・これでいいんだ

これが・・・世の中のためになるのだから





気が付くと僕は神殿のような場所にいた。どこだろう・・・ここは。

「召喚成功。お疲れ様です」

そこには二人の人影があった。一人は小柄の女性で、もう一人は背の高い男性だろうか。

「ここは・・・」

「大陸アガルタに存在するブリュタール王国です」

どちらも聞いたことのない名前だ・・・つまり異世界に転生したのかな

僕の疑問を感じ取ったのか長身の男性が答える。

「転生・・・というより転移、に近いですかね」

「どういうことですか」

「異世界の魂をここに呼び寄せるのですよ。そうして受肉させてここに存在している、ということです」

「異世界の魂を・・・」

「はい、最も肉体から離れた魂だけですけど」

「なるほど・・・それでどうして僕を呼んだのですか」

男は姿勢を正しこう答えた。

「実はお嬢様が冒険者ギルドを立ち上げようとしたのですが誰一人来なくて・・・ギルドを作るのに最低一人冒険者が必要ですからね・・・ですから」

その男の言葉に後を継ぐように少女はこういった。

「人を召喚して冒険者にしようってわけ」

少女は僕に近づきこう言い放った。

「あなた・・・冒険者になってみない?」


こうして僕は異世界で生活をすることとなった。

異世界での生活は順調だった。なにより、努力したことがそのまま反映されたことが一番大きかった。

練習を積み、実践を通してレベルアップしていく。そうして強くなり強いモンスターを倒せるようになった。

ギルドの普及活動にも力をいれた。おかげで人が集まりギルドが大きくなっていった。

努力すればその分確実に報われる。

気が付けば僕はその世界のとりことなっていた。


ある日竜の秘宝についての噂を耳にした。それを所持していればどんな魔法でも使えるようになるという。その宝は神が住むという神の頂に存在するらしい。僕は一部の魔法しか使えなかったため、ぜひそれを手に入れたいとおもった。

実際、山に行くまでは大変苦労した今までにない強力なモンスター、高度な謎かけや罠の数々。神の頂に到達するまで何度も失敗し、何度も力尽きた。

だがその度にモンスターの性質や弱点、罠やダンジョンを研究し、レベルを上げ、装備を強化した。


「ぐおおおおおオオおおおおおおおおおおおおオオおおオオおおお‼」

巨大な龍が牙をむく。腕を振り下ろし衝撃波を発生させる。

この衝撃波に僕は何度も倒された。そのため僕は衝撃波にはいくつかのパターンがあること、そしてそれぞれ威力が弱い場所やパターンの見極め方を知っていた。

「うおおおおおおおおお‼」

僕は衝撃波を躱し龍の喉元を切り裂く・・・が、カキン、と音がして剣がはじかれてしまった。

やはり硬い。ダメージはそれほど通っていないようだ。

だが


「グガアァァァァああああァァァあああああァァ・・・」

龍が炎ブレスをはく。それをひらりと躱し再び喉元を切りつける。

ズシャ、と音をたて剣が深くつき刺さった。

これも知っていたのだ。龍は炎ブレスをはいた後は喉元が極端に弱くなることを

そして・・・喉元を攻撃すれば高確率で炎ブレスをはいてくることを

「ぐおおおおおオオおおおおお・・・ォォ・・・」

断末魔をあげ龍は倒れた。ついに龍を倒したのだ。

僕はそのまま神の頂へとたどり着いた。

神の頂には神殿が立っていた。中に入ると一人の老人が座っていた。

「ついに・・・ここまできおったか・・・」

僕は剣を置き彼に尋ねる。

「あんたが神様?」

「そうじゃ・・・おぬしに伝えようとおもったことがあっての・・・」

「伝えたいこと・・・?」

「そうじゃ・・・」

彼は祭壇にある指輪を指さした

「そこにある竜の秘宝なんじゃが・・・」

「これが竜の秘宝・・・」

指輪を手に取りはめてみる。指輪は僕の指にぴったりとはまった。

これですべての魔法が使えるはず・・・



「残念じゃがおぬしにそれは使えん・・・」



「は・・・」

僕は絶句した。あんなに苦労し、あんなに頑張ったというのに・・・

「どうして使えないんだよ・・・」

僕は老人-神様に尋ねた。神様は少し視線を落とし「なぜなら・・・おぬしは生きているからじゃ」と答えた。

「生きてる・・・それはいったい」



「おぬしは元の世界でまだ生きている。そう、おぬしが暮らしていた世界でな・・・」



元の世界、とは僕でいう現実世界のことだろう

「おぬしはあの晩、少女を狙っていたストーカーから彼女をかばい、刺されてしまった。じゃが、奇跡的に命は落とさずに済んだ」

神様が語り出す

「しかし刺された衝撃でおぬしの魂が肉体から離れてしまい、生霊となったわけじゃ。そなたは今生きてはおるが・・・。植物状態というのかの?生きてはおるが意識がない状態となっておる。」

「正直危険な状態じゃ・・・。わしの力で何とか生きながらえているが、正直いつ死んでもおかしくない」

「助かる方法はただひとつ・・・おぬしが元の身体に戻ること、それだけじゃ。」

神様はそう告げた。

「生霊となってすぐ別の世界に連れていかれたから探すのに骨がおれた。見つけたはいいもののわしらは下界に降りることができん。そこで、我々が唯一来ることのできるこの神の頂まで来てもらったわけじゃ。竜の秘宝の噂を流しての」

そうだったんだ・・・

「いつ肉体が死んでもおかしくはない。元の世界へ帰って・・・」

・・・なら

「僕を殺してください。生きていたって迷惑ですし、死んだほうが少しは社会貢献になりますから・・・」

「おぬし・・・どうしてそのようなことを・・・」

「僕は人の役に立とうとしてきた・・・人々に貢献しようとしてきました・・・。しかし人を助けようとしても結局失敗ばかり・・・僕には人を助ける才能なんてない。むしろ、僕がいたらそれだけで迷惑な存在なんです。」

「だから・・・僕を死なせて下さい・・・誰も・・・僕の帰りを待ち望んでなんかいませんから・・・」

「そうか・・・」

神様は少し考え・・・そしてある場所を写しだした。

「ここは・・・」

「おぬしが入院している病院じゃ」

「え・・・」

「おぬしの様子をみてもらう・・・なに、ほんの少しだけじゃ・・・その後どうするか・・・おぬしが決めるとよい・・・」




僕は病院のベッドで横たわっている。部屋の中は夕日が差し込みほんのり紅く染まっていた

僕のベッドの近くに一人の少女が座っていた。

少女には見覚えがあった・・・僕の妹だ

「今日からね・・・新学期が始まったんだよ・・・」

妹が小さく呟く

「お兄ちゃんと同じ学年になったんだ・・・」

そうか、もうそんなに時間が経っていたのか・・・異世界の生活で気づかなかったなあ

「ねえ・・・お兄ちゃん、帰ってきてくれるよね・・・」

妹が泣きそうな声で話しかける。

「妹さん、もう閉院時間ですから、帰りましょう・・・」

看護師さんが退室を促す。妹は小さく頷き、出ていった。




「先生、息子は意識を取り戻せるのでしょうか」

場面が変わりここは診察室の中、母が僕の担当医であろう人物に話かけている。

「正直言って難しいですね・・・。私たちでもやれることはしているのですが・・・」

「そんな・・・」

場に重い空気が流れる。

「なんとか、なんとかならんのですか」

今度は父が尋ねた。

「打てる手は打ちましたし・・・後は回復を待つしかないですね・・・」

父は何も言えなかった。

その帰り道、両親は小さな神社に寄り道した。

手を合わせ、「息子が戻ってきますように」と何度も祈っていた。

神様によると両親は毎晩、仕事の合間をぬって病院を訪れているらしい。



昼頃だろうか、辺りが明るかった。

それでも、僕の周りは時が止まったかのように静かだった。

扉が開き、一人の女性が姿を現した。

僕はその女性に見覚えがある。

委員長だ。顔つきが大人びていたものの、紛れもなく委員長だった。

彼女はベッドの横まで来ると静かに語りかけた。

「もう春だね。ほら、桜が咲いてるよ」

その声は優しく包み込むようだった。

「私は知ってるよ・・・君が優しいところ」

「人が困っているのをみて、助けようとして、力になりたいと願って」

「でも・・・それが人には伝わらなかったんだよね」

「伝わらなくて・・・だから苦労してきたんだよね。つらい思いをたくさんしてきたんだよね。」

彼女は続ける

「私ね・・・君の気持ち、君の苦労を分かっているんだ。だから君が少しでも報われるように支えてあげたかったんだよね。」

「それなのにこんなことになっちゃうなんて・・・。」

彼女はうつむき、小声でこういった。

「君に・・・会いたいよ」




なぜ僕のことをこれほど心配しているのだろう

なぜ僕に目覚めて欲しいと願っているのだろう

僕あ目覚めてもまた迷惑をかけるだけなのに

僕は次々と疑問が湧いてきて、そしてなぜか締め付けられるように苦しくてしょうがなかった


「どうするか決めたかね」

神様が問いかけてきた。

「はい」

僕は・・・

「僕は・・・」


最後まで読んでいただきありがとうございます。

もしよかったらコメントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ