序章
それが何時から見始めた夢だったか、今となっては覚えていない。そもそも同じ夢を見ていたと気付いたのも最近なのだ。
少なくとも日本とは思えない広大な大地。地球かも怪しい星空。周囲には夢にしてはえらくリアルな濃い血の臭いと死体の山。その中で俺は《彼女》を抱き締めた。
―泣かないで。今度は私が貴方を守れたから。
そんな結果に意味なんて感じない。俺はどんどん温もりと力が抜けていく彼女をどうする事も出来ないまま、喉が裂ける程に慟哭した。
―ねえ、もしも次があったら。その時は平和な国で、平和な時間を普通に貴方と過ごしてみたいな。
それが出来たらどんなに良いだろうか。なら俺は祈ろう。誓おう。そう告げた時、彼女から最期の温もりが消えた。
そして残った敵は俺達を囲む。良いさ……この世界も、この輪廻も俺達を拒絶したのなら、俺もお前達を拒絶するだけだ。俺は幾星霜の刻を経てもなお俺の魂と共にあった槍を手に走り出す。
―破壊してやる!滅ぼしてやる!その為なら俺は俺の魂すらも差し出そう!
言葉は力に。力は現実を呼び覚ます。夢は何時もここで終わり、俺は目を覚ます。彼女が先に死んだ時の結末はどんな情景でもここに帰結する。
逆に俺が先に死んだ時は当然そこで終わる。意識が落ちる瞬間まで、泣きじゃくる彼女の顔を見ているのは辛いが、俺にはどうしようもなかった。
だから願うんだ。次こそは、次こそは必ずと……。
それは一人の少年と一人の少女が紡いだ物語。
それは人の魂に刻まれた英雄達の賛歌。
それは数多の世界を纏め管理してきた大いなる大樹が紡ぐ祈り。
二人は幾度となく生まれ、出会い、愛し合い、そして引き裂かれる。
幾つもの世界で、幾つもの時代で、その物語は悲劇で幕を閉じてきた。
故に二人は願う。次こそは、次こそは必ずと。
これはそんな二人が紡ぐ未来を記した一つの物語である。
To Be Continued......