ペットボトルってなんぞ?
「ここ岡山だよ?」
少女の口にした耳慣れない地名に俺は戸惑った。
__俺はさっきまでミカモにいたはず、そこで馬車に轢かれて意識を失って気が付いたらここにいた。
「オカヤマとはどこだ?地図で言うとどの辺りだ?」
「地図?この辺りの人じゃないん?ちょっとまって・・・」
少女は徐に奇妙な板の様な物を取り出し、俺に見せた。
「ほらこの辺だよ、四国の上」
__見たこと無い地図だった、少女は小さな島国の一点を指していた。
「お兄さん外国の人?それにしては日本語上手いけど」
「ミカモの冒険者だ」
少女も俺も混乱している、言葉は通じるが、話は噛み合っていない。
「どこだろうそれ・・・検索しても出てこないけど・・・」
少女は板の様な物を触って話しているが、俺には何のことかさっぱり分からない。
__これでは埒が明かない
「なあ君、少し聞きたいんだがいいか?」
板と見詰め合っている少女に、俺は質問を始めた。
「俺を助けてくれたのは分かったが、その時の状況について詳しく教えてくれないか?」
「状況って言っても、お兄さんが倒れてたのを私が見つけて、それからは話した通りだよ?」
__やはりおかしい、誰かが運んだにしても状況が変だ。
「お兄さんやっぱ外国の人でしょ?名前なんていうん?」
「ライト=ゴルドだ。」
少女は少し呆気にとられていた
「や、やっぱり日本の人じゃないね・・・」
「私は倉敷、倉敷美星だよー」
彼女の名前も、俺の住んでいた地域では聞きなれない名前だ。
もし本当にここが俺がいた国とは違う場所ならば、何故馬車に轢かれたはずの俺がここで倒れていたのか。
何故身包みはそのままで、怪我も無く意識が戻ったのか、分からない事だらけだ。
巨大な建造物や、目まぐるしく行き交う大量の人々に圧倒される
「どうしてこんな事に・・・冒険者として名を馳せて、家を継ぐのが俺の一生だと思っていたのに・・・」
絶望に打ちひしがれる俺に、少女は声をかけた。
「あ、あのー・・・お兄さん顔色悪いけど大丈夫?」
「熱中症か何かかなあ、私そこの自販機でお水買って来るねー。」
少女が気を利かせてくれたようだ、ここは日陰だというのにかなり暑い。
それに鎧を着たままだから余計に蒸し暑い。
剣も盾も無事だ、誰にも盗られていない。
「いい加減そのコスプレ脱いだらー?はいお水。」
「一体そのコスプレというのは何だ。それに鎧を脱いで、もし急に魔物が来たらどうする。」
「ま、魔物?それってイノシシとかオオカミ?ここそんなに田舎じゃないよー」
少女が帰って来て、透明な容器に入った水を渡されたが、飲み方が分からない。
妙に硬い蓋の様な物がついている。
「ペットボトル開けらんないの!?ほんとにどこから来たん?」
「それにさっきの魔物なんて、世界中どこ探してもいないと思うよ?」
「世界に魔物がいないだって!?」
__魔物は人類共通の敵だ。それを倒し、街や人々を守るのが俺達冒険者の役目だ。
__魔物がいない、ならば冒険者もいないのか?周りには鎧はおろか、剣や弓を持つ者もいない。
__似たような服装ばかり・・・
俺は膝から崩れ落ちた
「ちょ、ちょっと大丈夫!?困ったなあ・・・」
「おーい美星ー!なにしてんのー?」
少女に別の女性が声をかける。
__知り合いか?