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ぽがてぃぶ

『トラブル処理のクラッシャー』


 上から下へと球が落ちる。

 どこにでもあるようなゲームセンターの中でパチンコ台を打ちながら、何となくぼーっとしていた。高校受験を失敗し滑り止めに通うことになった俺は、荒んだ心を慰めるために遊びに来ていた。とはいえ本来なら友達ともっとどこか別の場所、例えばカラオケだとか、ボーリングだとかに行くのが妥当なのだろうが、いかんせん、俺にはそれができない。

 なぜなら。俺以外、全員受かったからである。

 回答欄が一つずつずれていた、とか、そういうのならまだ希望は持てた。流行っているインフルエンザが運悪く襲い掛かってきて、当日フラフラしながら会場へ向かった、とかなら、全力で言い訳ができた。

 しかし、現実は違う。

 体調も万全だった。見直しもちゃんとした。三回も。あれだけ確認して誤っていたらそれはもう神様の悪戯としか言いようのないレベルだ。つまり、その線はない。教師からもそこそこ評価されていた。六、七割型受かるだろうといわれていたんだ。最善を尽くした。持ちうる限りの力をすべて出し切った。けれど、落ちた。いつもグループでバカ呼ばわりされいて、本人も半分以上諦めていたあの梅沢さえも、受かった。そんな感じで、何度も何度も同じことを頭の中でぐるぐると逡巡させながら感傷に浸り続けていた。

 ふと、腕時計を見る。気が付くともう夜の十一時を回っていた。携帯を確認してみても親から連絡一つ来ていない。気持ちを察してのことなのか、ただ自分の息子に対して関心がないだけなのか。今の俺にとってはどうでも良いことだった。

 荷物置き場にしていた隣の空席の上からバッグを持ち上げ、肩にかける。帰っても何もないだろうから、近くのコンビニで弁当でも買って帰ろうか、と運動不足の体を動かして渋々ゲームセンターから出た直後、

「おい、そこのきれいな姉ちゃん。俺たちと一緒に遊ばない?」

 声がした。確かに俺は過去に女と間違われた経験がある。しかしそれは小学生のころである。どうでもいいな。

 発せられたその声は右の方から聞こえてきたようで、恐る恐る体を向けて目を凝らしてみたが何も見えない。ここから見えないということは…どうやら、ゲームセンターの横の路地裏に誰かがいるらしい。

 「え、あ、あの。私帰るところなので…。」

 「そんな固いこと言わずにぃ、な?正剛?」

 「そうだよお、見たところ高校生ぐらいだろ?今春休みなんだし、今のうちに、パーッと遊んどこうよぉ~。」

 直接見てはいないが、おそらく典型的なナンパだろう。今時実在するもんなんだな、こういうの。んー、どうしよう。

 歩いて近づいてみると、数名の話声がだんだんと大きくなっていくのが分かった。っていうかさ、なんかもっとこう、ないの?おれが、女の子を、救ってやるぜっ!的な。そういう高揚感。何でこういう気持ちなんだよ。

 俺は曲がり角の直前まで来て立ち止まった。誰かさんたちはまだざわざわしているらしい。会話の様子から女の子が嫌がっているのが分かる。ノリノリならともかく引いているのなら、まぁ割り込んで入っても構わないだろう。

 まごまごとした会話が聞こえる。少しだけ深呼吸をした。加えて目を閉じる。そして、イメージする。人生なんてこの世界なんて、結局のところどうしようもないくらいに理不尽にできている。受験落ちたし。彼女できないし、まず女友達がいない。兄弟いないし?従妹もいないし?俺の周りにいる女なんて母親くらいだし?女子に対する接し方とかわからないし?言い訳だって?知るか。

 だから、もう、


 壊れてもいいじゃないか。


 「ヘーエイ!そこの華麗なカ・ノ・ジョ・♪これから僕と一緒にパーリーしなぁい?」


 左手を腰に当て、右腕を曲げて空中でくねくねさせながら顎を思い切り天に向かって突き上げて、艶めかしく大仰に言い放った。数秒の間、無音が走った。その場にいた男二人は目を真ん丸にして呆気にとられて固まっている。そして、今回僕のヒロインである気になる彼女の反応は…?


 「キモい、最っ低。ナンパする男なんて、大っ嫌い。」


 そう言い残して、黒髪ロングの美少女さんは、地面をガツガツ踏みながら怒って帰っていきましたとさ。めでたしめでたし。

 人生初のナンパであっけなくフラれてそのままの格好で硬直していると、パーマかアフロか際どいヘアースタイルをしている男が、肩に力強く、そして優しく手を乗せてきた。

 「どんまい、気にすんな。女なんていくらでもいるんだ、また頑張れよ。」

 そう言って彼は俺の右手を掴み、手の中に何か握らせて離れていった。

 「正剛、今日はもう引き上げるぞ!」

 「お、おう!」

 正剛と呼ばれたストレートヘアーの男は俺に一瞥をくれた後、そのままパーマ頭に駆け寄り去っていった。

 一人を残して誰もいなくなった寂しい路地裏。真っ暗な闇をささやかに照らす蛍光灯と身をよじるような冷たい風が、俺の身体を孤独で包んでいった。手の中に違和感を感じ、思い出したように姿勢を崩して、握りこぶしをそっと開けた。中に入っていたのは。

 たった一つの、あめ玉だった。


いや、思いつきですね。

適当です。

パッと見で大きな問題に思えても、どうでも良い価値観でぶっ飛ばせられたら楽になれるかな、と

思いまして。


連載設定ですが気まぐれなのでどうなるかわかりません。全部大まかに言うと未定です。

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