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掌編小説集3 (101話~150話)

話せる少年

作者: 蹴沢缶九郎

その少年は、お世辞にも頭が良いとは言えなかった。つまり勉強が苦手なのである。母に学校の成績を叱られ、彼なりに勉学に励んだ事もあったのだが、これがさっぱり成果に繋がらないのだった。


ある日、少年が自宅でテレビを見ていると、テレビに映る自分と同じ日本人が外国の言葉を話しているではないか。少年は母に言った。


「お母さん、この人達、外国の言葉を話しているよ。」


「そうね、この人達は通訳さんって言うのよ。」


「通訳?」


「そう、通訳さんはね、日本人と外国の人が会話を出来るように言葉の架け橋を作ってくれるの。通訳さんになる為には沢山勉強しないとなれないし大変なのよ。」


「ふうん、じゃあ外国の言葉が話せれば凄いんだね?」


「う~ん、まあ…そうね。」


「そっかぁ…。」


少年は外国の言葉を話してみたいと思った。


その日の夜、少年は不思議な夢を見た。不思議な老人が現れる夢。その老人が少年に言った。


「どうも君は頭が良ろしくないようだ。特別に君の頭を良くしてあげよう。」


「本当に!? じゃあ、外国語を話せるようにしてよ!!」


「なるほどなるほど、良かろう。」


老人は少年の額に手をあてた。老人に触られた部分が少し熱くなる。


「よし、これでいいだろう。しっかり勉強せえよ。」


老人は消えていき、そこで目が覚めた。目覚めたばかりだというのに、少年の頭はすっきりと冴えわたり、何故か外国の言葉が話せる気がした。少年はさっそく「おはよう」を頭に思い浮かんだ言葉に変換させて、母に挨拶をした。


「ペニャッポジバグナププ。」


「バカな事言ってないで、早く顔を洗ってきなさい。」


一体どこで使われているかも分からない言葉を話せた所で意味がないと気づいた少年は、いよいよ他人から頭がおかしくなったと思われる前に、言葉の使用をやめてしまった。

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