告白
「すみません、丸1日お世話になってしまって。しかも看病まで・・・」
お母さんがお礼のロールケーキを徳島先生に渡しながらペコペコ頭を下げた。
「いえいえ、いろんなお話をして楽しかったです。ねぇ?なっちゃん」
「うん!ご飯美味しかった」
努めて明るく答えた。
「まだ熱が下がってないので、病院に連れて行ってくださいね」
「ほんとに、お世話になりました。」
病院に行って家に帰ると、鏡をみた。鏡に映った私は目を赤く充血させていた。そっと指で目元に触れた。先生の細い指が触った目元。今度は髪の毛に触れた。先生の両腕が抱えこんでくれた頭。そして左胸に触れた。先生への「好き」をめいいっぱい伝えた鼓動。この一晩で私は先生でいっぱいになった。私は知らなかった。「好き」が大きくなりすぎると切なくなるということを。
次の日、学校に行くと妙に私に視線が集まるのを感じた。
『なんだろう、気持ち悪い。』
そう思いながら教室に入ると、友達がわーーっとかけよってきた。
「なつ!やったじゃん!」
「うらやましいぞ!」
身に覚えのない祝福の言葉。
「なになに?なんのこと?」
「郁実くんが、なつのこと好きなんだってーー!」
「ええええっ!?」
佐藤郁実くん。学校1のイケメン君で、女子なら一度は恋したことがあるはず。でも、その郁実くんがなんで私を?
キャーキャー言っていると郁実くんが登校してきた。
「おはよう」
にっこりスマイル。
「おはよぉーー!」
女子たちもかわいいあいさつで返した。
私は気づかれないように教室を出ようとした。すると、
「あ、なっちゃん!」
気づかれた…
「お、おはよ」
「おはよ、どこ行くの?」
「・・・トイレ」
「鞄持って?」
「・・・」
マズイ。完全に見抜かれてる。
「あ、置いていかなきゃ」
あははは、っとなんとも苦しい作り笑いをして出ようとした。が、
「逃げないで?」
しっかりと腕を掴まれた。視線が痛い。
「あの、離して・・・」
「噂って、もう聞いてたりする?」
「・・・今聞いた。」
「だったらさ、俺の気持ち、わかってるよね?」
「・・・」
どうしよう、どうしよう!通りたくないルートに足を踏み入れかけてる。
私には、徳島先生がいるもん。
「・・・ごめん、好きな人いる。」
やっとのことで声を絞り出した。郁実くんは驚いた顔。初めてふられたんだろうな。
「好きな人って、誰?俺の知ってるやつ?」
ううん、と首を振った。
「そっか、でもあきらめないから。」
そう言い残して郁実くんは席に戻った。
廊下から覗いていた女子の目が物凄く怖かった。
これからどうなるのか、だいたいの想像はついた。