雨 2
「うわ、かなり近かったね・・・って、なっちゃん?」
先生の声が耳元で聞こえた。
「え・・・?」
つい先生に抱きついてしまったみたいだ。
「うあっ、ごめん、なさっ『ピカッ』・・・うひゃぁっ!」
Tシャツを握る手に力が、入ってしまった。
『早く離れないと・・・』
うっすら目を開けると、窓に映った稲妻。その瞬間、脳裏にある記憶が映像になってよぎった。
周りは暗い森。誰もいない。聞こえるのは雨が葉を打つ音と雷の怒号だけ。
『やば、思い出しちゃった・・・!』
こうなったらもう震えを止めることができない。もう昔の話なのに、体はちゃんとその恐怖を憶えている。
「なっちゃん?大丈夫?雷苦手?」
先生が私の肩をつかんで顔をのぞき込む。目に溜まっていた涙が次々と落ちていって、震えもひどくなった。
「あ・・・ごめんなさい。トラウマで・・・」
先生は私の言葉にはっと目を見開いて、そして悲しい顔をした。
「ごめんね、僕のせいでトラウマになっちゃったのか・・・」
「違うよ!私が勝手に遭難しちゃったから!先生のせいじゃない」
それを聞くと先生は困ったように微笑んだ。
ピカッドドーーーン
私は今度は迷惑かけまいと、必死に耐えたが、体は条件反射でビクンと震えた。
それを見た先生は私をぐっと抱えこんで、耳を塞いでくれた。
「目を閉じたらいいよ、ね?」
耳元で先生が囁く。顔が熱くなるのがわかった。心臓もドクドクうるさい。先生に気づかれるんじゃないかとおもうくらいだった。でも、先生の香りと暖かさですぐにウトウトし始めて、寝てしまった。