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ローズクォーツ  作者: 奈月 心音
4/9

雨 1

ピピピピ、ピピピピ、カチ

「ふぁー・・・朝か、眠い・・・」

大きくなあくびをひとつして、ふと机に目を向けた。

朝日を受けてキラキラ光るもの。昨日先生にもらったビーズのピンキーリング。

それを左手の小指にはめた。゛左の小指は幸せを運ぶ゛何かの本に書いてあったことを思い出して、フフッと笑った。私にとっての幸せはただひとつ。

「不格好は指輪チャン、幸せを運んできてね」

ルンルン気分で家を出た。


「えーーー・・・」

ザぁぁぁっと音をたてて物凄い量の雨が降っていた。

「なつ、今日はお母さん仕事休むから鍵持っていきなさい。」

『はぁ、大雨の上に今日は先生に会えないなんて・・・』

さっきのルンルン気分はどこかへ消えてしまった。


午後―

「えー、今日は雨がひどく、電車が止まる恐れがあるため、午後の授業は無しです。」

先生の言葉に教室は一斉に騒がしくなる。

「なっちゃん!帰ろう!」

みなみがかけよってきた。さっさと準備を始めたが、

「あ、なつ、お前はちょっと職員室に来い。昨日提出の大学の資料に不備があった。」

先生に呼び止められてしまった。早くしないと電車止まっちゃうかもなのに!

『今日はとことんついてない・・・』


「よし、おーわりっと」

やっと職員室を出ると、校長室のテレビに

《在来線大雨のため運転休止》の文字。さらにアナウンサーが「今日中の復旧は無いだろうとの報告がありました。」

『な、なんてこったい!』

急いで携帯を取り出しお母さんに連絡を取る。

「もしもし、お母さん?電車が止まっちゃって、迎えに来てくれる?」

<あー、そのことなんだけど、今お父さんの迎えに行ってるところだから徳島先生にお迎え頼んどいた。すぐ迎えに行くからそれまで徳島先生の家に居てね。>

「え?」

校門に目を向けると、徳島先生の車。窓をあけて先生が手を振った。それに振り返しながらお母さんに返事をして、電話を切った。

『今日はなんてついてるんだ!』


「すごい雨だねぇ、なんで早く帰らなかったの?」

車に乗ると先生がタオルを差し出して聞いた。

「えっと、資料の不備がなんたらって先生に呼び止められまして・・・」

「うわぁ、なっちゃんらしい!」

先生はケラケラ笑ってハンドルをきった。

「てかさ、指輪・・・」

「あ、いや、普通に可愛いかったから!」

「ふぅーん、でもありがとうね。つけててくれて嬉しい」

ニコッと笑った先生の顔が私の心臓を鷲掴みにした。

『ずるいよなぁ』


その後も他愛のない話をしていると、あっという間に家に着いた。

「なっちゃんびしょ濡れだからそのままお風呂にgo〜」

「え、ちょ、着替えとか・・・」

「そんなん、僕のじゃだめ?風邪ひくよりいいでしょーが」

『こ、光栄です!!』

なんともドラマ的展開。

お風呂から上がって、用意されたパーカーとハーフパンツを見ると

『ほんとに先生の?』

男の人の服にしてはウエストなど細かった。

まぁ、でも私には当然大きいわけで・・・

「せんせーい、お風呂ありがとうごさいました〜」

「おかえりー、あーやっぱり大きかったか」

先生は笑いながら、ホットミルクを用意してくれた。

「はい、どうぞ〜」

「ありがとう」

私の隣にドカッと座ってテレビをつけた先生は、いつものエプロン姿じゃないからか、すごく大人っぽく見えた。ホットミルクをちびちび飲みながら横目で先生を見た。いつも見上げていた顔がすぐ近くにある。

サラサラの黒髪、すらりとした鼻筋、意外と長くて濃いまつ毛、もう30代だというのにあまり目立たない髭。

『隠れイケメン、かぁ〜・・・』

ぼーっと眺めていると、視線に気づいたのかくるりとこっちを見た。

「なに?なんかついてる?」

突然こっちを向いた顔が思ったより近くて、思わずテレビの方に顔を向けた。

「なんにもー」

「僕がかっこよかった?なんつって〜」

「ぶっ!」

思いがけない言葉に思わずミルクを吹いてしまった。

「ばっ、そんなわけ!」

ばしばしと先生の肩を叩く。

「ミルク吹くほどー?」

先生はまたケラケラと笑った。

ほんと、冗談ばっかり!


と、その時

バリバリッ ドドーーーン!

「ひゃぁぁ!」

すぐ近くに雷が落ちた。

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