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ローズクォーツ  作者: 奈月 心音
3/9

ピンキーリング

「みてみて!しゅんたからのプレゼント!」

みなみが小指にはめたピンキーリングを見せびらかしながらはしゃいでいる。

「はいはい、よかったねー」

「なっちゃんも彼氏つくれば?モテるのに。」

みなみが帰り支度をしながら言った。

「好きな人じゃなきゃ嫌。」

「みなみ!帰ろうぜ!」

しゅんたが教室に入ってきた。

「あ、しゅんた!帰ろう!じゃあなっちゃん、また明日ね!」

「うん、ばいばーい。」

2人が教室を出ると、日直日誌を書いていた私だけになった。

「ふう、そろそろ帰ろう」

と、支度を、始めると・・・

「うそ!家の鍵忘れた!」

家の鍵を持っているのは、すぐ近くの幼稚園に勤める母だけ。

「もう、サイアク・・・」

と、言いながら、顔がニヤけてしまった。


幼稚園の園門をくぐると、ちびっ子たちがわーっとかけよってきた。

「なっちゃん!あーそぼ!」

すっかり常連となってしまった私は毎回囲まれるようになってしまった。

「あ、なっちゃん。お帰りー」

声の主は・・・

「あ、先生」

黒髪にメガネの長身の男の人。私の初恋の人。

「お母さんでしょ?まだかかるから・・・ちょいと手伝ってもらえる?」

先生がニヤっと笑った。


「はーい、ではこの画用紙でうさぎの被り物を作りマース。」

先生がピンクの画用紙を広げて言った。

「もしかして、全員分?」

「うん、26人分作るからねー」

鼻歌を歌いながら作業を始めた先生。

「えー、そんなに・・・」

口ではそう言ったものの、心の中の私は喜びで踊り狂っていた。


「ふーーー、終わったぁ!」

二人で伸びをして、片付けを始めた。

「なっちゃん、これ」

先生が私に何かを手渡した。

見てみるとそれは、白とピンクのビーズでできた小さな指輪だった。

「どうしたの?これ?」

「昨日、年長組の女の子たちと作ったんだけど小さくなっちゃって、僕の指にははまらないから。今日のお礼にどーぞ」

そう言って先生はニコッと笑った。

「ははっ、これ私の指も小指にしかはまんないよ」

左の小指につけて電気にかざして見た。キラキラと光るビーズたち。

「相当小さかったねー、じゃあこれはピンキーリングってことで。」

先生はそう言うと、画用紙を持って隣の部屋に行ってしまった。

「ピンキーリング・・・」

先生がちまちまこの指輪を作っているのが想像できる。結構苦戦したんだろうなぁ。

そう思うと一層指輪が愛おしくなって、自然と顔がにやけてしまった。

「なつー、帰ろうか」

お母さんの声が聞こえた。

「先生!指輪ありがとう!またね」

「こっちこそ手伝ってくれてありがとうね!明日も鍵忘れて、おいでよ」

いつもおどけて返すんだから。

「いーよ、忘れてやる!」



寝るまでずっとはめてた指輪を外して、電気にかざして眺めた。

「先生からピンキーリングもらっちゃった」

嬉しすぎてベッドをゴロゴロと転びまくって、この上ない幸福感で眠りについた。



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