強襲! 闇の乙女! 1
「はーはっはっは! 表れたな! ホーリーセイバーの諸君!」
俺はサイコカオス411号機の中から声高々にそう叫ぶ。
目の前には二人だけというどこか抜けた感じのするホーリーレッドとホーリーイエロー。
「ドクターフェルシル! 今日こそ貴様の命日だ! お前の野望打ち破ってやる!」
レッドがいつも通り、模範的な口上を述べる。
「そうだよ! これ以上悪いことはさせないんだから!」
イエローも今日は真面目だった。
二人の機動乙女は、勇ましくサイコカオスに立ち向かっている。
「新」悪役の登場にはもってこいの状況である。
「ふっふっふ……残念だが、今日お前達の相手をするのは、私ではない!」
その言葉に、モニターの先のホーリーレッドとイエローは驚いていたようだった。
それはそうだろう。
このネクロム界で戦うのは、ホーリーセイバーとダークネクロム。その二つの両者だけである。
それ以外にだれが戦うというのか。むしろ、それ以外の誰かが戦うなど、あり得ないのである。
そう。これまではあり得なかったのだ。
「さぁ! 闇の乙女、ダークセイバーよ! 私のために奴らを倒してもらおうか!」
高らか俺は、異世界全体に響きわたるようににそう言い放った。
レッドとイエローは明らかに動揺しているようだった。
「はい。わかりました。ドクターフェルシル様」
コックピット内に響く声。
それは、まぎれもなく一条清夏……ホーリーブルーの声だ。
「あ……なっ……お、お前……」
「え……そ、そんな……」
そして、サイコカオスのモニターには異様な光景が映し出されていた。
レッドとイエローの前に立ちはだかっている人影。格好は、レッドとイエローと同じようにバトルスーツに身を包んでいる。
しかしホーリーセイバーのスーツと違い、そのスーツは、闇そのものというくらいに真っ黒だった。
「さぁ……ホーリーセイバーさん。お手合わせ、願いましょうか?」
そういって黒いバトルスーツは身構えた。
「なっ……お、おい! お前……ブルーなんだろ?」
声を荒げてそう言うのは、ホーリーレッドである。
「ブルー? なんのことでしょうか?」
「お前……ネクロムに寝返ったっていうのか?」
すると、聞こえてきたのは笑い声だった。
清夏のどこか狂気さえ感じさせるような笑い声に、思わず俺は少し恐怖を感じる。
「……寝返った? 違います。これが本当の私……この黒いバトルスーツに身を包んだ姿こそ、本当の私なんです」
「本当のって……じゃあ、ホーリーセイバーはやめちゃうの?」
心配そうにたずねるのはイエローである。
しかし、ダークセイバーはそれには答えず、そのままホーリーセイバーに襲いかかって行った。