悪の組織の手下として 5
そして、さらに次の問題点。
「……ちょっと、一条さん」
「はい? なんでしょうか、真奈様」
「……狭いんだけれど」
片岡の運転する車の中、後部座席には俺を中心として左右に真奈、そして、清夏が座っていた。
俺は両手に華、といえばいい表現だが、少々狭苦しい思いをするハメになっていたのである。
「すいません。ですが、私は聖治様の忠実なボクですので」
「……だからって、どうして聖治にぴったりくっ付く必要があるの?」
「手下たるもの、どんな時でも、主の下に使えるのが、従者の務めですから」
眉間にしわを寄せながら、真奈は清夏を睨んだ。
清夏は清夏で真奈に睨まれたところで何も感じていないと言った様子である。
「ま、まぁ……いいじゃないか、真奈。清夏の好きなようにさせてやれば……」
「聖冶は黙ってなさい!」
と、車の窓ガラスが割れんばかりの大きな声で真奈はそう言った。
あまりのことに片岡は車を急停止させ、俺と清夏は真奈を驚いて見つめていた。
「ま、真奈……」
「……片岡。私、ここで降りる」
「え……し、しかし、お嬢様」
「降ろしなさい! いいから、早く!」
片岡は大きく溜息をつくと、車のドアのロックを外した。真奈はそのままドアを開ける。
「お、おい、真奈! お前――」
「……そうやって、いつまでも正義の味方とイチャイチャしてればいいわ! この色ボケ首領!」
乱暴に車のドアを閉めるとそのままスタスタと真奈は歩いていってしまった。
俺はその様を見ていることしかできなかった。
「……どうしたんでしょうか? 真奈様……」
さもわざとらしく、清夏は言った。
俺はもう一度大きく溜息をついた。これがもっとも大きな課題。
清夏と俺が一緒にいると、真奈がこの上なく不機嫌なのである。