嬉しい問題
「さぁ、行きましょうか、聖冶様」
「お、おい、いいのか?」
さすがの俺も不安になってきたので、思わず清夏に訊ねてしまった。
「はい? 何が?」
「……奈緒だよ。何もあんないい方しなくてもいいじゃないか」
すると、またいつもの見透かしたような瞳で、清夏は俺を見る。
「……そうでしたね。横井さんは聖冶様の大切な幼馴染。ああいう突き放した言い方は失礼でしたよね」
申し訳なさそうな顔になって、清夏は俺を見る。
「べ、別に奈緒が幼馴染だからじゃなくてだな……」
「でも……いいじゃありませんか。聖冶様」
と、そういってまた清夏は俺の腕にぴったりと身体をくっ付けてきた。
「なっ……お、お前……こ、こんな所で……」
「別に構いません。私はもう聖冶様の手下なんですから。皆にどう思われようと問題ないです」
「し、しかしだな……」
そういって俺は教室を見回す。
「ああ。真奈様なら先にお帰りになりましたよ」
「……べ、別に真奈を探していたんじゃないが」
あまりにも図星だったので俺はなんとかごまかすのに精一杯であった。
そういう俺を見て清夏はニンマリと微笑んだ。
そう。これが、俺にとっては目下の問題だ。
確かにホーリーセイバーが寝返ってきたことは、ダークネクロムにとってはこの上なく幸いな出来事だ。
だが、俺にとってはホーリーブルー、つまり一条清夏と、屋敷の中で一緒に暮らすことはいささか問題となっていたのだった。