不思議!異世界での戦い!
「ほら。何ぼぉっておしているの?」
ロボットから降りた俺に対し駆け寄ってきた真奈が、いきなり俺を叱りつける。
モニター越しでなく、生で見る真奈はやはり美しい。が、どこか俺に対しては冷たい印象を与えているのである。
「あ、ああ……い、いや。真奈も大きくなったなぁ……と」
「何を変なことを言っているのかしら。もう私達も17歳よ。大きくならなかったら困りものよね」
「ま、まぁ、それは……そうなのだが……」
17歳。俺も真奈も現在17歳だった。
俺が悪の首領の称号を継いだのは16歳の誕生日を迎えた時だった。
前々からいわれていたもののいざ悪の組織の首領として世界征服に乗り出すのか、となると緊張するものがあった。
しかし、そんな風に身構えていた俺を待っていたのは、いささか残念な現実であった。
そもそも、悪の首領といっても、テレビの戦隊モノの特撮のように、街へ繰り出していって人々を遅い、建造物を破壊する……なんてことはできない。
それは既に何年も前から梅木家に対して街、及び国からそういうことはやめてくれ、と通達されていることだった。
梅木家も、かつてはテレビのように街を破壊し、人々を恐怖のどん底に突き落としていたようだが、いかんせん、そういった被害額はきちんと国や自治体から梅木家に対して請求されていたのである。
梅木家としてはそういった被害額を全て賄えるだけの財産は持ち合わせていたが、毎度のことできりがないので、そういったことは既に爺様の先代の頃からやめてしまっていたのである。
では、街中で悪の限りを尽くせない俺は、どこでそれをやっているのか。
それは、どこかといえば、異世界、なのである。
ダークネクロム脅威の科学力で作りだした「次元転送システム」により、かつてダークロネクロムが棲家としていた荒廃した闇の世界である「ネクロム界」……その異世界においてホーリーセイバーとダークネクロムは一対一……正確には俺と三人のホーリーセイバーが戦っている。
先代の頃から、正義の味方ホーリーセイバーとの戦いはその異世界で、ということがしきたりとなっているのであった。
……こうして考えてみると、なんともプロレスのような、或る意味仕組まれた世界征服のように思える。
だが、正義の味方との戦いに世界の命運がかかっているというのは、異世界での限定された戦いとなった今でも変わらない。
ダークネクロム、つまり、俺がホーリーセイバーを徹底的に一度でも負かせれば、その時点でダークネクロムの世界征服は確定するのである。
何しろ、ダークネクロムが持っている力には、ホーリーセイバー以外の存在ではとても適わないのだから。