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ボクのヒーロー 2

「あ……ああ……た、確かに……言ったな。そんなこと」


「でしょ? ちゃーんと覚えているんだからね」


 そういってニッコリと微笑む奈緒。


 全く……頭が悪いくせにこういう暗記力は俺をもはるかに凌ぐものだ。


「……あの時、聖冶はさ、ボクがいじめられているの知って、女の子達に対して怒りに言ったんだよね。そしたら、女の子達も黙っちゃって……それ以来、イジメもなくなったんだ。

 でも、ボクにとって一番嬉しかったのは、聖冶のあの言葉だった……あの言葉は、十年経った今でもボクの心にずっと残っているんだ……」


 遠い昔を懐かしむようにそういう奈緒。


 かつての俺はそんなことを言っていた。


 別段正義の味方の真似をしていたわけでもない。


 俺はあくまで昔から合理的な考え方をする人間だった。


 だから、奈緒に関しても勉強を補ってあまりある程の身体能力を考えれば、勉強なんてできなくたっていいだろう、そう考えて俺は奈緒に損な言葉をかけたんだと思う。


 だが、奈緒にとってはその言葉はどうやら、何よりも嬉しかったようなのだった。


「……でもさ。今日の戦いで聖冶ったら……勉強できないのに正義の味方なんて可笑しい、って……ぼ

、ボクとしては、なんだか聖冶に裏切られて気持ちで……」


 と、少し頬を膨らませながら奈緒はそう言った。


 なるほど。それで奈緒はあんなふうにそのまま戦闘を放棄して帰ってしまったのか。


 ……って、となると、やっぱり原因は全て俺にあった、というわけか。


「……あー……すまなかった……許してくれ」


「……いいんだ。わかっているよ。聖冶は悪の組織の首領。

 で、ボクは正義の味方のホーリーイエロー。戦わなきゃいけないし、戦う以上は、聖冶が悪の組織の親玉としてボクにそういう攻撃だって仕掛けてくるのに文句を言うのは、やっぱりおかしいよね……」


 もちろん、その通りだ、というのは簡単だ。


 確かにその通りなのかもしれない。


 だけど、それで片付けてしまっていいのだろうか。


 俺としては損な風に片付けてしまうと正義や悪の戦いよりも、もっと大事なものがあって、それをないがしろにしてしまっている気さえする。


「……そうだな。戦いだからな。文句を言っても始まらない」


「あ、あはは……だ、だよね……うん! だ、だからさ! 聖冶。気にしないでよ! ぼ、ボクは平気だよ! 

 大体聖冶みたいな悪の親玉の攻撃なんかで一々凹んでいられないよ! よ、よし! ああ! もう踏ん切りがついたよ!」


 そういって奈緒は立ち上がった。


 その表情は確かに踏ん切りはついているような顔だった。


「だからさ! もう大丈夫だから! 聖冶はこれからは気にしないで、聖冶の好きなように戦って。ボクもさ! 今日みたいない逃げないでちゃんと戦うから!」


 そういってベンチに座ったままの俺に、奈緒は元気そのものといった感じで笑って見せた。


 確かにその表情は先ほどまでの作った感じはない。


 本心でそういっているのだろう。


 だけど……俺は――

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