消沈の機動乙女 5
「あ、ああ。そうだな……しかし、どうしてこんな所に――」
「聖冶! ブランコ乗ろうよ! ブランコ!」
と、そういって奈緒は無理矢理俺をブランコまで連れて行く。
「わぁ……懐かしいね。ボク達が小さかった時のまんまだ」
「お、おいおい。ブランコなんて……もうガキじゃないんだぞ……」
「いいじゃん! ね? 乗ろうよ、聖冶」
と、身軽に奈緒は既にブランコに飛び乗った。
「あはは! ほーら! ね? 楽しいよ?」
そういってブランコを子供のように前後に漕ぐ奈緒。
俺は何も言えずにそのままその隣のブランコに腰を降ろした。
俺はその様子をただ黙って見つめていた。
いや、何かおかしい。いつもの奈緒の明るさではない。
それは長年付き合ってきた幼馴染だからよくわかる。
なんというか……明らかに奈緒は無理をしているような木がするのだ。
いつもの奈緒のような明るさではない。
なんというか、作ったような明るさ。
「な、なぁ……奈緒」
と、俺が声のトーンを落として話しかけると、奈緒はブランコを漕ぐのをやめて、俺の方を見た。
その瞳は今まで幼馴染として付き合ってきた奈緒の瞳としては初めてのものだった。この上なく悲しそうに俺を見つめている。
「……ごめんね」
と、奈緒は悲しげにそう言った。
俺は驚いて、奈緒を見る。
「え……ちょ、ちょっと待て。な、なんでお前が謝る?」
「だ、だって……戦闘中に勝手に帰っちゃったから……えっぐ……ひっぐ……きっと、聖冶すごい怒っている……って……」
そのまま奈緒は今までなんとか持ちこたえていたのが崩壊するように泣き出してしまった。
顔をクシャクシャにして涙をこぼしている。
俺は……この表情を見て、ようやく、今日、俺はやってはいけない作戦を実行したのだ、ということを再三にわたり実感できた。